05.相談と誤解で騒動が始まる


携帯がけたたましく鳴り続ける。うぅ、眠い。あと5分。
目を閉じたまま手探りで携帯を探し出し、鳴り続けるアラームを止める。よし、あと5分。

「ハレルヤ!起きないと遅刻するよ!」

安眠を妨げるアレルヤの声。頼むから寝かせてくれ兄上。

「う…あと5分…」
「あと5分じゃないよ!朝ごはん食べそびれちゃうよ?」

別に俺はいつもこんなだらしないわけじゃない。平日はちゃんとアレルヤと共に起きている。
なんで今日はこんなにだらしないのかというと、理由はあの双子だったりする。
あいつら、風呂入ってからもここに居座りやがって。しかも恋愛話とかそういう話ばっかりしてたし。
2人が部屋に帰ったのが夜2時。それから俺たちはフラフラと寝室に入りベッドにダイブした。
なのになんでこいつはこんなに元気なんだ。昨日も思ったけどやっぱり化け物だ、こいつ。

「ほら、早く起きてハレルヤ!遅刻しちゃうよー」
「んー…」

頭は結構しっかり働いてるつもりなんだけどな。なぜか体が動かない。声も気の抜けた声しか出ない。これは頭も動いてないってことか、なるほど。
アレルヤに引っ張られつつベッドから這いずり出てもそもそと着替え始める。あーねみい。

「…ハレルヤ、ボタン掛け違えてるよ」
「んん…」
「…聞いてる?ハレルヤ」
「んん」
「…聞いてないね。やってあげるから、ほら」

そのままずるずるとアレルヤに着替えをやってもらった。子どもか、俺は。






思いっきり口を開けて欠伸を1つ。あーねみい。やっぱりもうちょっと早く部屋に帰るべきだったか。
兄さんに「はしたないぞ」と言われたが、眠いんだからしょうがない。

「おはようございます。ニール、ライル」

後ろから穏やかな声がした。そちらを振り向くと、いつもの笑顔のアレルヤとまだ眠そうなハレルヤがいた。

「おはよう、アレルヤ。…ハレルヤはまだおねむか?」
「誰かさんのせいで寝不足ですから」

さらりと毒を吐かれた。アレルヤなんか黒くない?

「ああ…悪かったな。さすがに居座りすぎた」

兄さんが謝るとアレルヤは「いいですよ、流れで言っただけですから」と言っていた。俺には本心から言ってるように聞こえたんですが、アレルヤさん。
まあいいや、とりあえずハレルヤだハレルヤ。幸いアレルヤは兄さんと話しているし、こんなに無防備なハレルヤを放っておけるわけがない。

「ハレルヤー?おーい」

とりあえず呼びかけてみるが、反応なし。まだ眠いのか目を擦っている。

「目擦っちゃだめだろ。ほら」

そう言って腕を掴んでどけると、

「んー…」

うわ、やべ。伏せがちの瞼とか、潤んでいる瞳とか、もう、なんていうか、やばい。やばいって!

「…どうしたんだ、らいる」

ちゃんとしゃべれてねえじゃんお前。そう言って笑えたらどれだけよかったか!!

「い、いや、なんでも、なんでもねえ」
「そぉか」

ああもう、お前そろそろ起きろ!起きてくれ!!
それからハレルヤがちゃんと目を覚ますまで、俺はずっと、うん、頑張った。自分を褒めてやりたいさ。






「ハレルヤ、ちょっと話あんだけど、いいか?」

昼休み、さあこれから学食に行こうというときに、ニールにそう言われた。

「いいけど、俺これから昼飯行くんだけど」
「じゃあ購買で買って屋上で食おうぜ。奢るからさ」

そこまでするということは相当大事な話なんだろう。そう結論付けて俺はニールの要望を飲むことにした。






「んで、話ってなんだよ」

屋上の床に腰をかけ、フェンスにもたれる。頑丈に出来ているフェンスはちょっとだけ痛い。
ニールも同じように隣に腰をかけ、パンを食べ始めた。

「んーまあ、後で言うからさ。今は飯食おうぜ。ハレルヤは何買ったんだ?」
「んー、焼きそばパンとフランクロール」

早く言えよとは思ったけど、まあ待ってやるかと思い話を合わせた。

「えぇ、甘いもんねえのかよ。ほら、これ半分やるよ」

そう言われて差し出されたのは、食パンに卵や牛乳などを混ぜたものをこれでもかというくらいに染み込ませた、所謂フレンチトーストだった。

「うえ、あっめえ」

齧ると口いっぱいに広がる甘い味に、もうすでに食パンの食感なんて微塵もしないやわらかさ。よくこんなの買ったなと言ってしまいそうになる。

「おま、嫌なら食うな!」

食うなって、お前が渡してきたんだろーが。

「別に嫌とは言ってねえし。いただきますよ」

そう言ってもそもそと食う。貰った分食っただけで胃がもたれるくらい重かったけど。

「ニール、焼きそばパン食う?」

フランクロールは食えたけど焼きそばパンは無理だった。これ以上食うと確実に吐く。

「え、いいのか?サンキュ!」

…ニールも半分食ったはずなのになんでそんな入るんだ。見てるだけで胃がもたれそうになる。うええ。
飯が終わったところで、話を聞こうとニールを見ると、がっちがちに固まったニールがいた。なんでだよ、意味がわからん。

「どうしたんだよ。話は?」
「あ、ああ、うん。話す。話すけどさ。ちょっと待って」
「俺ぁさっきから待ってんだよ!早く言わねえと教室帰んぞ」
「えっちょっ待って!待てって!言う!今言うから!」

はあ、こいつこんなに優柔不断だっけか。呆れてため息を零すと、ニールがもっと情けない顔になった。

「お、おれさ、おれ。俺さ!」

ようやっと決意したようで、真剣な眼差しで見つめられる。つられて俺も真剣な顔つきになった。が、

「俺、アレルヤが、好き、なんだ。だからさ、ハレルヤ」

言われた言葉があまりにも衝撃的すぎて、ついぽかんと口を開けてしまった。

「協力してくれないか!」
「へ、」
「へ、ってお前…」
「え、あ、悪い」

俺があんまりにも気の抜けた声を出すからニールも脱力してしまったようだ。
でもこんなこと急に言われたらそりゃびっくりするだろ!俺は間違ってねえって!

「で、ハレルヤ。どうなんだ?」

また真剣な顔つきで聞かれる。冗談や生半可な答えではいけない。ちゃんと答えないと、だめなんだ。

「俺、は」

アレルヤを、こいつに渡すのか。俺は。間接的とはいえ、それを、俺が。
ずっと一緒にいたアレルヤを、俺は、おれは。そんなの、いやだ。
でも、ずっとそれじゃいけないって、わかってるさ。いつかは離れるんだ。そのいつかが、今ってだけ。そういうことなんだろう。
それに、俺は、こいつに、ニールになら、アレルヤを、兄を、任せてもいいと、そう思った。

「……わかった」
「え?」
「わかったって言ってんだよ!てめえがアレルヤとくっつけるように俺が協力してやるよ!」

その言葉を聞いたニールの顔がぱあと明るくなる。

「マジで!マジでか!うわ、ありがとう!ハレルヤ!」

そこまではよかったんだけど、ニールがいきなり抱きついてきたのにはびっくりした。

「てめえ離れろ!俺はてめえみたいな趣味は持ってねえ!」

そう言っておもいっきり殴ってやったけど。






「痛いですハレルヤさん」
「あなたが悪いんですよニールさん」

教室までの道のりを2人で歩く。ニールの頬はばっちり赤くなっていた。

「あーあ、てめえのせいで昼休み潰れちまったじゃねえか。償えこのやろう」
「この頬に免じて許してくれよ」

こんなやりとりをしながら教室に戻ると、急に教室内が静まった。
え、なに。なんで全員俺らを見てんだよ。俺ら何かしたっけ?
ニールを見ると、ニールも覚えがないのだろう、ぽかんとしていた。

「ハプティズムさんにディランディさん!今まで何をしていたのですかー?」

そんな俺たちにミレイナが走り寄ってきて、そんなことを言われた。何って、別に何もしてねえけど。
でも次の言葉で俺たちは凍りつくことになる。

「やっぱりお2人は付き合っているのですか!?」
「えっ」
「はぁっ!?」

ちなみに前者がニール、後者が俺だ。まあそんなことはどうでもいい。それより、なんだって!?
俺とニールが、付き合ってる?







これからニルアレになるようにニールさんにはがんがん頑張ってもらいますよ!









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