最高のクリスマス?



ライハレ現パロ。長編の学パロとは関係ありません
ライルもハレルヤも乙女っぽい



今日は12月20日。もうすぐ俺がハレルヤと付き合って初めてのクリスマスだ。
家デートという名目でハレルヤの家に上がりこんだ俺は、24日はどこにいきたいか、と笑顔で問いかけた。
やっぱり恋人なんだから24日はデートだよな!夜はお洒落なレストランで食事して、夜景の見えるホテルで一泊して…。
うまくいけばもしかしたら…なんて邪なことも考えてしまう。
だらしなく頬を緩ませている俺は、次のハレルヤの言葉に凍り付いてしまった。

「あ、俺24日バイト入ってるから無理だわ」

まじかよ!






「なあ、ハレルヤ〜。ほんとに無理なのか?」
「しつけえな。無理だって言ってんだろ」

ハレルヤが冷たい。せっかくのクリスマスなのに一緒にいられないなんて。
ハレルヤは何も思ってないんだろうか?そうだとしたらかなりショックだ。
もしかしたら、ハレルヤは実は俺のことなんてどうでもいいんじゃないだろうか、とか思うと気分はどんどん沈んでいった。

「その代わりにさ、正月終わるまでは休み死守したから25日とか年末とかに、どっか泊りがけとかさ…」

そう、ハレルヤの話していることも聞こえないくらいに。

「…俺、帰る」
「え?」

ハレルヤがこっちを見る。金色の右目が驚きに見開かれていた。
それでも帰り支度を止める気はない。鞄を持って立ち上がり、そのまま玄関に向かう。
ハレルヤが追いかけてきたのを気配で察した。
ちら、と眼だけを動かして窺うと驚きから困惑へと表情が変化していた。

「なあ、おい、なんでだよ。俺、なんかしたか?」

ハレルヤの声が少し震えている。
違う、ちがう、ハレルヤは悪くない。俺が勝手に落ち込んでるんだ、ごめんな、ハレルヤ。
こう言って、抱きしめたりして。ハレルヤはいつもどおり俺を罵って殴ったりして。
そうできたら、どれだけよかっただろうか。
願望に対して体は正反対に動く。靴を履いてドアノブに手をかける。
出て行こうとしたとき、ジャケットが少し引かれた。少し振り向くと、ハレルヤが俯いてジャケットを掴んでいるのが見えた。

「ライル、ご、めん」
「なんで謝んの」

自分でもびっくりするくらい冷たい声が出た。ハレルヤがびくり、と体を震わせる。

「なんで、って」
「理由もわかんねえのに謝るなよ」

この言葉を、もっと優しく言えていたらよかった。そうしたら、もっと変わっていただろう。
ジャケットをぐい、とひっぱるとハレルヤの手が離れた。ハレルヤが息を飲むのが伝わるが、そのまま扉を開け外に出、勢いよく扉を閉めた。
バタン、と大きく音がした。
後悔の念が押し寄せるが、もうどうしようもない。少し泣きそうになるが、俺に泣く権利はない。
熱くなる目頭をぐっと押さえて、冷たい風が吹きすさぶ街を歩き出した。






24日。俺は朝から家で怠惰な生活を送っていた。
兄さんはアレルヤと出かけた。というかデートだ。うらやましいなんて、すごく思っているけど。
エイミーも友達と遊びに行ってしまった。迎えに来た友達の中に男がいたので、ちょっと八つ当たり的に睨んでしまった。反省はしているが後悔はしてない。
父さんと母さんも仕事でいないので必然的に家は俺一人になってしまった。
今まで誰かしらと一緒にクリスマスを送っていたのでその反動で一人が寂しい。
あまりにも暇なので外をぶらぶらしようと思い、放置していたジャケットに手をかけた。





「はあ…寒ぃ」
帰り道を歩きながら、俺は重いため息をついた。
予想はしていたけど、やはりカップルが多かった。クリスマスということも手伝ってかラブラブ度も3割増しだ。
その中でも今から彼氏を見つけようと躍起になっているのか、やたら逆ナンが多かった。こんなにされたのは初めてだ。
その度に丁重にお断りしていたのだが、流石に最後のほうは辟易して軽くあしらってしまった。
そうしているうちに夕方になってしまい、急いでレンタルショップで数枚のDVDを借りて、コンビニで飲み物とお菓子と、思わずケーキも買ってしまった。
今日は自室に篭るつもりだ。DVDを借りたのも、クリスマス特番を見たくないからであった。

「我ながら、寂しいクリスマスだな」

そう自虐的に言うと余計に寂しくなった。とりあえず早く帰ろう。






家の近くまで帰ると、家の前に誰かいるのが見えた。否、誰かはわかっていた。信じられなかっただけで。
黒いコートに身を包んだそいつは俺に気が付くと嬉しいような恐れているような、微妙な表情を浮かべた。

「…よう、ライル」
「…ハレルヤ」

少し声が震えた。ハレルヤは俺が怒っていると思ったんだろう、寂しそうに少し目を伏せる。
このままでもどうしようもないし、何より寒い。そう思い歩を進めていく。
どんどん近づき、ハレルヤの前まで歩く。ハレルヤはこっちに向かいはしなかったものの、ずっとそこで待っていた。
近づいてわかったけど、どれだけ外にいたのだろうと思うほど頬や鼻の頭が真っ赤になっていた。
少しの沈黙。それを破ったのはハレルヤだった。

「ライル、この前マフラー忘れてたから、届けに来た」

どうせ取りにこないだろ?と自虐的に笑いマフラーを渡してきた。
全くもって忘れていた。そういえばなかったっけ。

「ああ、悪いな、ありがとう」

そう言うと、「おう」とだけ返ってきた。そして、また沈黙。
このまま続くと帰ってしまいそうだったから、今度は俺から話を切り出すことにした。

「ハレルヤ、バイトは?」

そう、それが疑問だった。今の時間ハレルヤはバイトのはずだ。なのになんでここにいるんだろう?

「ああ、バイトだったんだけどさ、早めにあがらせてもらった」
「…いつからここにいた?」
「わかんねえ。3時くらいにバイト終わったからそれくらい」
「3時って、今6時だぞ!?」

急いでポケットに入れていた手でハレルヤの頬を包む。あまりの冷たさにびっくりした。
3時間もこんな寒い中待たせていたのかと思うと、無駄にぶらぶらしていた自分を呪いたくなった。
いきなり触れてきた俺にハレルヤはびく、と震えたが、気付かないふりをした。

「なんでこんなになるまで待ってたんだよ…」

今の俺はさぞ情けない顔をしていることだろう。泣きそうなのを頑張ってこらえているけど、限界が近い。

「だって、このままだと、もうライルに会えないかと思った。そんなの嫌だ。うざいと思われても会いたかった。わがままで、ごめん」

そのとき押し寄せてきたのは後悔の念。なんであんなことで怒ったんだろう。自分で自分を殴って罵ってやりたい。
何も言わない俺を不安に思ったのだろう、目に涙を溜めながら「ごめん、ごめん」と繰り返している。
俺は我慢ならなくなって思い切りハレルヤを抱きしめた。場所なんて考える余裕はなかった。

「ら、ライル」
「ごめん、ハレルヤ。ごめんな。お前は何も悪くないんだ。悪いのは俺なんだ。ごめん、ごめんな」

堪えていた涙がこぼれる。なにもうまいことが言えない。ただ謝るしかできなかった。

「ライル」

ハレルヤの手が俺の背中にまわる。ハレルヤも泣いているのだろう。声が揺れていた。
俺たちは暫くの間、お互いに謝りながら抱きしめあっていた。






それからとりあえず俺は、ハレルヤを家に招き入れた。あのままじゃ風邪引くもんな。

「それでさ…ライルはなんで怒ってたんだ?」

とりあえず暖かいコーヒーを渡してやると、そう問われた。

「だって、ハレルヤが24日だめって言うから、俺のことなんてどうでもいいのかと思って…」
「だから俺、25日から正月終わるまでは休みとったから泊りがけとかでどっか行こうって言ったのにさ」

…なんですと?
呆然とする俺に気付かずハレルヤは続ける。

「そのあとすぐに怒って帰ろうとするから俺何か言ったっけって思って…どうしたんだ?ライル」

やっと気付きましたかハレルヤさん。ぽかーんと口をあけている俺を。

「え、ハレルヤ、そんなこと言ったか?」
「は?」

ハレルヤもぽかんとした表情で見つめてくる。え?嘘?俺そんなん聞いたっけ?

「お前、聞いてなかったのか…?」
「え、あ、はい…」

呆然とした表情から一転、にっこりと笑顔になる。ちょっと、ハレルヤさん。目が、目が笑ってませんよ。

「じゃあなんだ、俺は、てめえが聞いてなかったせいでこんなにひとり悩んでたってのか…?なあ?ライルさんよ」

怖い、果てしなく怖い。さっき泣いてたかわいいハレルヤはどこへいった!?

「す」
「あ?」
「すいませんでしたーっ!!!!」

渾身の土下座も通じず、「歯ぁ食いしばれやぁ!」の声と共に頬にかつてないほどの衝撃を受け、そのまま意識がブラックアウトした。



end.








クリスマス?か?
もっとラブラブさせたかったのにどうしてこうなった。





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