03.ファイル整理ともしかしたら気まぐれ


「おーっす…」

少し小声で言いながらドアを開けてまるで校長室のような豪華な部屋に入る。さて、くるぞー。

「遅い」

ほらきた。ティエリアの冷たい声。

「悪かったよ。ちょっと話し込んでてな」

この話はもう終わりだ、という意味を込めて会長専用の席に着く。ティエリアがため息をついた。

「あーあーもう。さっさと終わらせるぞ。おいこら刹那、お前ガンプラで遊ぶなら仕事終わらせてからにしやがれ!」

怒鳴ると、刹那は渋々片付けて書類に取り掛かる。
こいつ俺かティエリアがが見張ってねえとすぐサボりやがるからな…しかも無言だから見てねえと気付かねえし。
部屋を見回すと、ニールが書類仕事をしているのが見えた。
さすがにいつもの仕事をした後にファイル整理はしんどいだろうし、俺はちょっと慈悲を見せてやることにした。

「ニール、お前はそれいいからファイル整理しやがれ」
「え、いいのか?」

ニールが目を輝かせながらこっちを見る。お前は犬か。

「いいからその書類よこせ。俺がやってやる」

我ながら見事な飴と鞭だと思う。まあ鞭がでかすぎる気もしなくはないけど。
ニールから書類を受け取って眺めていると、ニールがこっちを見ているのに気付いた。つーか、近いんですけど。

「な、なんだよ」

聞こえてないのか無視してるのか、ニールは何も言わない。
しかも離れるどころかどんどん近づいてくる。近い。近すぎる。
しかもちょっと頬が赤い。意味がわからない。どうしたらいいんだよちょっと。
鼻先がくっつきそうなほど近づいたところで止まった。
整った顔が目の前にある。女子が騒ぐ意味が少しわかった。

「ハレルヤ、ちょっとさ…」

だが今はそんなことを考えている場合じゃない。この状況をどうにかしなければ。穏便に。穏便に……。

「ちょっと相談が「近いわ!!!!」

我慢できなくてつい頭付きしてしまった。ニールが頭を抱えて悶絶しているが知ったことか。

「ちょっハレルヤさん…すごく痛いんですけど…なんで?」
「俺がなんでだっつの…てめえ顔近えんだよ。身分をわきまえろ」

お前は王様かなんかか!とニールが喚く。あーもううるさい。

「いいからとっとと整理しろ!終わるまで帰さねえからな!」

そう怒鳴ると渋々とファイル整理を始めた。俺も自分の席に戻る。
なんなんだよあいつ…相談とか言ってたけど…それをあの近さで言う意味はあるのか?
1つため息をついて俺も仕事に戻ることにした。考えてても仕方ねえし。
いつもより少し量の多い仕事にもう1つため息をついた。






だんだんと日が落ちる時間が遅くなっているのでまだ時間はあると錯覚してしまっていた。
アレルヤが時計をみて「もうそろそろ時間だね」と言ったのでつられて時計を見ると針は6時を指していた。
やべえ、まだ全然整理終わってねえよ!
あまりの乱雑さに思ったよりてこずってしまい、まだ半分も終わっていないような状態だった。

「お前ら終わりそうか?」

ハレルヤがそう聞くと各々状況報告を始めた。みんなもう終わるようだった。俺意外は。

「ニールは…まあ、いいか。どうせ終わってねえだろ」
「はい……」

俯きながら返事をするとハレルヤがため息をした。こいつ最近ため息が多い気がする。というか、会長になってからか。
苦労しているのかと思うと同時に、今その苦労をさせているのは自分だと思うと情けなくなった。
整理しろと言ったのはハレルヤだけど、悪いのは居眠りをした俺だ。それで俺の仕事もハレルヤにさせてしまっている。
悪いことをしてしまった、と思った。でも今はそれを後悔してる時間じゃないよな。
早く終わらせて、それからちゃんともう1度ハレルヤに謝ろう。
そう思って顔を上げると、

「あれ?」

正面にはティエリアがいなかったっけか。誰もいないんだけど。
横にいたアレルヤもいない。気が付くとソファには誰もいなくなっていた。

「他のやつは全員帰ったぞ」

声のした方を見ると生徒会長用の椅子に座ったハレルヤがいた。
ハレルヤは仕事をしながら、気が付かなかったのか?と言った。全く気が付かなかった。みんな帰ってたのか。

「ああ…。ハレルヤはまだ終わってないのか?」
「誰かさんが仕事増やしてくれたせいでな」

う、と言葉に詰まる。
気まずくなって、ハレルヤから視線をそらして作業を再開する。ため息が1つ聞こえた。今日何回目だろうか。
しばらく整理を続けていると、紙束をトントン、と揃える音が聞こえた。どうやら終わったようだ。

「終わったのか?」
「ああ、教務室行ってくる」

そう言うと立ち上がって扉の方に向かっていった。
あーあ、これであとは1人か・・・あと何時間で終わるかな・・・。
ふと、会長の席に鞄が置いてあるのが見えた。俺はあんなところに置かないからハレルヤのだろうけど、なんで持っていかなかったんだ?
もう仕事は終わったし、教務室に行くならそのまま帰ったほうが早くないか?
忘れたのかな。それぐらいに考えて作業に戻ることにした。
しばらくすると、ハレルヤが戻ってきた。

「おお、おかえり。ってかお前鞄忘れてただろ」
「ん?ん、ああ…そうだな」

珍しく歯切れの悪い答え。どうしたのかと思って見ていると視線に気付いたのか向こうもこっちを見た。目が合う。

「あ、わ、悪い」

そう言って視線を逸らす。視界の端でハレルヤが首を傾げているのが見えた。

「……どれぐらい終わった?」

しばらくの沈黙のあと、そう聞かれた。なにが、というのは聞かなくてもわかる。

「…半分くらい、かな?」
「はぁ!?お前…」

可愛らしく首を傾げながら答えると、呆れたような声が返ってきた。
わかってます。わかってますよ。進みが悪いことくらい!首を傾げたのも自分で気持ち悪いことくらいわかってます!

「だからそんな可哀そうなものを見る目で見ないでください!」
「はぁ?」

いきなり叫ぶ俺にハレルヤが訝しげに視線を送る。が、頭を抱えている俺はそれに気付かなかった。
それよりも恥ずかしさでいっぱいだ。いますぐ逃げたい。無理だけどさ。
頭を抱えたままでいると、いきなりドサッという音が聞こえた。
顔を上げると、ハレルヤがまだ整理が終わっていないファイルを棚から持ってきて俺の正面に置いていた。
さっきのはその音だったのか。これは早くしろ、という催促だろうか。鬼だ。
呆然としていると、ハレルヤが俺の正面に座ってそのファイルを手に取る。
そして手際よく整理を始めた。え、どういうこと?

「え、ハレルヤ?」
「2人でやったほうが早く終わるだろ」

それに俺も遅刻したしな、と照れたようにはにかみながら続けた。先程のようなの悪魔のような笑みではなく、いつもの自信に満ち溢れた笑みでもない。子供のような笑みだ。
なかなか見たことのない可愛らしい笑い方に、少しうれしくなった。こいつもこうやって笑うんだ。

「ありがとうな、ハレルヤ」

俺が笑顔でそう言うと「お前の為じゃねえっての」と言い少し顔を伏せ、整理を始めた。かわいいやつめ。

「お前もさっさとやれ!」
「了解、会長様」

2人でやったファイル整理は本当にすんなりと終わった。







また終わらなかっただと…でこの日は終わらせます!本当に!
ニールとハレルヤはお互いに恋愛感情はありません。
2人ともいい友達だと思ってます。
そして何気にアレルヤの隣に座っていたニール








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