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「#甘甘」のBL小説を読む
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 昼休み、御幸のいないタイミングで苗字は唐突に告げた。
「ねえ、御幸くんとチューしたいんだけど、どうすればしてくれると思う?」
「ぶはっ」
 唐突すぎる質問に、口の中に含んでいたものを盛大に吹き出してしまった。苗字は「うっわ、きたなッッ!」と盛大に顔を顰めたけれども、今のは確実にお前の発言が悪い。
「ちょっと顔に掛かったよ。うえー」
「そんな質問すっからだろが!!」
 強く声を荒立てても、苗字はどこ吹く風といった顔をして俺の言葉を受け流した。
「御幸くんのなら、かかったものを更に舐めとるけどね!」
 えっへん、と誇らしげに語っているが、言っていることはただの変態である。
「気持ちが悪ィし、お前なら実際にやり兼ねないからヤメろ。で、さっきの発言は一体何なんだ」
「うーん、言い方が悪かったかな? 言い方を変えるとだね、どうやったら御幸くんと接吻できるのかって話なんだけれども」
「全然変わってない上に、余計にいやらしく聞こえるんだが」
「どうやったら口吸いができるのかって、」
「あああああもうチューでいいっての!」
「ういっす。じゃあどうしたらチューができると思う? ぜひご教授願いたい!!」
 お願いします! と急に真面目になって頭を下げる姿を見ると、放って置けずに手助けしたくなる俺は苗字に相当甘い。倉持って面倒見いいよな、とこの問題の張本人にニヤニヤとした笑みを貼り付けながら言われてしまうのも仕方ない気もしてきた。苗字は同室にいる後輩にどこはかとなく似ている気がするのだ。唯一違う点を挙げるとするならば苗字の方が頭がいいというところだろうか。だからこそ余計に面倒だったりするのだが。
 俺はやれやれと息を吐き出し、苗字にどう助言すればいいものかと思案した。
「倉持が彼女いないってことはわかってはいるんだけどさ、一応参考にね!」
 前言撤回。ウィンクをバッチリと決めてそう言った苗字に俺の理性がプツンと切れた。お前に彼女いないとか言われたくねえよ。
「イダダダダダ、倉持さん?! ちょ、倉持さん?! ギブ、ギブッッ! 無理!!」
「あ? 聞こえねえよ」
「嘘で、ず…、許じでぇぇぇ死ぬ」
 このまま首にキメていると確かに死にそうだと判断して手を放す。苗字は息も絶え絶えに呼吸をしているがちっとも罪悪感は湧かなかった。だが心持ちすっきりとしたので、思ったことをそのまま口にした。
「あー、あれじゃね、流れ。こう、その場の雰囲気とか、ノリとか」
「ふむ、なるほど」
 顎に指を当てて真面目くさった顔でほほう、と何度も首を縦に振る。なんだか少しイラっとさせる仕草ではあるが、いつものことなのでそこはスルーだ。
「じゃあ、倉持はそういう雰囲気に持ち込むためにはどうすればいいと思う?」
「あー……、まず人気がいなくて、」
「人気がいなくて」
「そんな中でお互いに目がこう、合って」
「目が合って」
「顔が何となく近づいて」
「近づいて」
「…いちいち復唱すんな、なんか恥ずかしいだろ」
「なんか聞いててドキドキした。倉持の知られざる性癖を一つ暴いちゃった感じ。ふはは」
「だあああ、もう自分で考えろ! そしてその前にまず付き合うことから始めろ! 順番逆だろ!」
「いやあ、もう告白し続けてるんだけど無理っぽいからこの際ね、既成事実を作っちゃおうかなと。外堀から埋めていこうと思ってそれを今一つずつ実行してるとこ」
「こわっっっ!!」
 俺が言えることはただ一つだ。
 御幸、今すぐ逃げろ。