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ずっと友達

 「離れててもずっと友達だよ」
 小さい頃の話。俺の眼の前に差し出された丸くて小さな子指に驚いて彼女の顔をまじまじと見る。彼女は白い八重歯をのぞかせて笑っている。その純粋な眼差しはキラキラしていて、外は雨が降っているのにも関わらず、ここだけは光の中にいるみたいだった。この時、泣いて喚いて抵抗すればよかったのだろうか。それともその手をはたき落とせばよかったのだろうか。もうこの頃から心の奥で芽生えていたこの感情を無視してまですることだったのだろうか。もう十数年も経ったというのに、今でも自分に問いかける。あの時の選択は果たして正しかったのだろうか。炯と舞ちゃんが後ろから灼なに黙り込んでるんだと急かしてくる。まだ幼かった俺はおそるおそる彼女の小指に自分の小指を絡めた。自分とは違う柔らかさに驚いて離そうと思ったけれどもそれは叶わなかった。彼女はぎゅっと力を込めて「あらた、やくそく!」と頬にたくさんのシワを寄せて笑った。「うん」もしかしたら、応えた声は震えていたかもしれない。俺はこの言葉に今でも縛られている。でもそろそろどうでも良くなってきたと開き直る頃なのかもしれないな。忘れたとすっとぼけても良いかもしれない。ドミネーターの引き金を自ら引くときと一緒だななんて唇をつい釣り上げてしまう。
「何ニヤニヤしてるんです?」
 カリナちゃんが眉を寄せて厳しい口調で言った。そうだ、今は仕事の最中だった。緊張感のカケラもないのは流石に不味いか。
「ん? ちょっと考え事」
「そう、なら良いけど」
 カリナちゃんは視線を窓の外の景色へと移した。俺はそれ以上聞かれないことに甘えて、もう少し名前との関係性について考えることにした。