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 49 背骨

 ふと目を覚ますと日が既に高く昇っていた。本日は休みだからとのんびりしすぎただろうか。ひさびさに春と仕事終わりに会い、夜ご飯を一緒に食べてお風呂に入ってから、二人で縺れるようにして布団へと雪崩れ込み、お互いに深く求めあってそのまま眠りについた。
 白い布団とシーツの間から、春のむき出しになった首筋から腰までが露わになっており、骨が浮き出ている。興味本位でその凹凸に沿って、上からゆっくりと指で辿る。なんだか別の生き物みたいだ。自分にも、これと同じような背骨があるのだろうか。自身の背中に触れてみてもあまりよく分からない。飽きもせず指で何度か春の背骨をなぞっているうちに、それだけでは無性に物足りなくなって、背中を繋いでいるひとつひとつの骨に唇を落とし、舌を這わせてみる。自分とはまったく違うしっとりとしたなめらかな肌に夢中になる。味なんてするはずもないのに、甘く痺れるような味が舌にじわりと広がっていく気がした。
 背中の真ん中の骨に唇を落とした瞬間、春はん、とくすぐったそうに身を捩り、寝返りをうった。そして僕の胸元へと頬を擦り寄せる。あまりにも可愛い仕草に朝から色々とやばい、と昨晩のあれこれを思い出していると、春のまつ毛が震えてゆるりとまぶたが押し上がる。
「さとる、おはよう」
 夢と現のあいだに揺られているようなふわふわした声が耳の中に深く潜り込む。シーツの上に乱れて散らばったやわらかな髪の毛をすくい取って口付けた。
「おはよ。体、どう?」
 訊ねると、昨晩のことを思い返しているのか、春は別に平気! と身体ごとそっぽを向いてしまった。平気なわけないだろうに、と腹の底から笑いがこみ上げる。久々だったからいつもよりもずっと激しくしてしまった自覚がある。言質を取った僕は気分が良くなり、ふーん、じゃあ大丈夫なんだと相槌を打ちながら、先ほどの続きの行為を再開させた。脊髄のあたりから唇で啄むように吸ってから舌でちろりと舐めとる。すると、春は息を詰めて、そこから少しずつ熱を孕んだ色っぽい吐息に変わっていった。
「ねえ、その気になってきた?」
「んっ、悟。当たってる……」
「当たってるんじゃなくて当ててんだよ」
 自分のものを彼女の腰に擦り付けるようにして、うなじに強く吸い付いた。今更止めることなんてできないけれども、「いい?」と耳元で囁けば弱々しい声で「……うん」と返事が返ってくる。
「じゃあお言葉に甘えて」
 イタダキマス。
 そのまま彼女の背骨から貪り尽くすとしよう。