47 落とし物
ジョルノとわたしは真新しい羽毛布団に埋もれながら子供のようにじゃれ合っている。
失ったものを数えるのをやめて、ひたすらに突き進んでいるわたし達の唯一の戯れだ。少し乱れた彼の髪の毛を耳にそっとかけてやる。
「擽ったいですね」
ジョルノは首を竦めて、喉の奥でふふっと笑った。その仕草は、女のわたしが嫉妬してしまうほど可憐で愛嬌があった。そして彫刻のように美しく縁取られた唇がゆっくりと言葉を紡いだ。
「僕はね、生まれ育った環境はあまり良くなかったけれど、それでも運だけはいいんですよ」
形の良い下唇を人差し指の腹でなぞると、ジョルノは恍惚とした表情で微笑み、悪戯な手ですね、とわたしの手は彼の手によって絡め取られ、そのまま手首、手のひら、手の甲、指先と恭しく唇を落とされていく。
「とてもいい拾い物をしましたから」
「それって、わたしのこと?」
「ええ」
「わたしは落し物なの?」
あんまりな例えに眉を寄せれば、
「シワが出来てしまいますよ」
とジョルノは鼻先で軽やかに笑った。依然と変わらず、わたしの眉間には力が入ったままだ。
「あなたは、神様の落し物です」
だから、そう拗ねないでください。そう付け足して、彼はわたしの頬を愛おしそうに撫でる。わたしの心の内に湧いた小さな怒りはみるみる消えて行き、次第には口角が自然と上がる始末。なんて、単純。
カーテンの隙間から零れる光が、ジョルノの顔に陰影を作る。あまりの美しさに言葉を失い、息を呑む。
「どうかしましたか?」
問う彼にわたしは言った。
「わたしにとって、神様はあなたなんだよ」