76 ふたりきり
待ち合わせも何もしていないのに、去年と全く同じ場所で彼に出くわした。お互いになんとなくここに来ることがわかっていたように思う。
雲ひとつない透き通ったように青い空を見上げる。去年とは大違いだ。あまりにも眩い空に思わず目を眇めた。
丁度一年前は雨が降っていた。わたしと二宮は互いに喋らず、雨の中傘をさしてずっと突っ立ったまま空を睨みつけていた。傘から落ちる雨だれが、彼の肩を濡らしていた。
どこへ行ったんだろうね
彼はわたしの問いに答えずまぶたをそっと閉じただけだった。
そっと隣を窺うと去年と同じように空を睨みつけていた。突如わたしたちの前から姿を消した彼女は生きているのか死んでいるのかすら、今もまだわからない。
「もう一年たったんだね」
「そうだな」
彼女がわたしたちの前から姿を消したあと、互いの胸にぽっかりと空いた穴を埋め合わせるように、二人で過ごした。けれども埋まる気配は一向にやってこなかった。それは二宮もわたしもわかっているはずなのに、二人でいることをやめられずにいた。
「二人きりになったのに、あの子にずっと振り回されているね、わたしたち」
二宮は曖昧に表情を動かして、まぶたをそっと閉じてまた言った。
「そうだな」
そのまぶたの裏には、三人でいたときの姿がぼんやりと浮かんでいる気がした。
降り続ける雨