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「顔」
俺の好きなとこどこなん、と尋ねられたから思うことを素直に言ったら、酷く傷ついたと言わんばかりに顔を歪めた。イケメンが台無しである。そんな顔されても、そのままに言っただけのわたしは悪くないと思うのだけど、まるで世界の終わりのような表情のまま肩を掴まれ詰め寄られる。力が強くて地味に痛い。
「は? そんだけ? ホンマに言うてるん」
「え、そうだけど。てか痛い」
「はあ?! もっとあるやろ、他に色々…」
「いや、顔以外ないけど」
「はあ?!」
「しつこい」
肩を掴んでいる手を払い除ける。力を入れていないのにアイタッ、と大袈裟に痛がって「俺今日もう部活頑張れへん…」と肩を落とし、とぼとぼとした足取りで体育館に向かった。
その背中を見送る。
でも結局君はバレーに夢中になってそんな些細な事忘れてしまうんだよ。そういうところが好きなんだけどね、なんて君に言えば、調子乗るの知ってるから言わないんだよ。
隣で一部始終を見ていた治は生ぬるい視線をよこしてわたしの頭を軽く小突いた。
「ベタ惚れやん」
「知ってる」