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テーマ「推しとの恋」
- ナノ -


 54 冬眠

「おい、昼飯できたぞ、ってかお前にとっては朝飯だけどな」
「ずっと眠っていたい」
「もう昼だぞ、いい加減起きろ」
 遮光カーテンを全開にし、部屋が一気に光で満ちあふれて、とてもまぶしい。目が開けられない。布団に顔を潜らせる。あたたかい闇に安心して、ふたたびまぶたを閉じ、抵抗の言葉を並べる。
「今日仕事お休みだもん。一日中寝るんだもん」
「ガキか、おまえは」
 布団の上に、呆れた溜息がひとつ。
「違うの、布団が出て行かないで、って言ってる」
「布団は喋らねえ、勝手に擬人化すんな」
 意外と規則正しい生活リズムで生きる洋ちゃんにいつも感心する。すごいなあ。それは多分、高校の時の寮生活で染み付いた習慣が抜けず、ずっと体に残っているのだろう。休日になった瞬間に、怠惰な生活をおくるわたしとは雲泥の差だ。一緒に生活していても、それぞれのリズムは変わらないのである。
「まあ、こうすりゃいいだけか」
「う、わっ?! まってまってまって、まじ寒い無理死んじゃう」
 掛け布団をばりりとはがされる。必死に抵抗を試みたけど、力でこの男に敵うはずもなく、呆気なく手から掛け布団は放される。まだ脱皮するには早いのに、蛹のかたく覆われている繭を、無理矢理剥がされているような感覚に近いのかもしれない。なんてひどい。シーツの上で丸くなって、寒さを耐え忍ぶ。ううう、寒い。死ぬ。上からの冷たい視線もあいまって寒いやら冷たいやら痛いやら。洋ちゃんは怠惰なわたしに容赦ない。
「死なねえ」
「いやこの寒さは死んじゃう」
「じゃあ起きろ」
「実は今真夜中の12時なんじゃ」
「んなわけねえだろ」
「冬眠しなくてはいけないのデス」
「あー、はいはい。じゃあ、ようするに、春があたたまれば良いんだよな?」
 おや、なんだか雲行きが怪しくなってきた。そうじゃない、そうじゃないんだよ。普通にあたたかい布団にくるまれてぬくぬくダラダラしたいだけだよ?
「えっと、洋ちゃん?」
「今度からこうするわ」
 上からがばりと覆いかぶさって、両手首を拘束される。まさかまさか、そんな。
「文句ねえよな?」
 ありまくりだ、バカヤロー。