あの子は私が持っていないものを持っている。友達、家族、愛嬌、個性…どれも素敵で羨ましいものだけど私がどんなに望んでも、到底手には入らない。そう思いこんでいた。
「君に個性とか友達とかがいない訳じゃないと俺は思うよ?ただ君が"なにもない"って思いこんでいるだけでさ」
「そんなこと…きっとフェリシアーノには、わからない。全部持っている人にはわからない苦しみだよ」
「ヴェー…全部持っている人は持っている人なりに苦しいんだけどなぁ…」
苦笑いをこぼすフェリシアーノは、なんだか疲れているような気がした。
私と彼は真逆だった。友達の多い彼。孤独な私。人懐っこくて可愛い彼。人見知りが激しくて無愛想な私。私達の出会いを当然の物だと考える彼。そんなことはない、偶然だと考える私。
「でもフェリシアーノはいいよね。友達もいるし、人当たりもいいし、私なんかより全然良いよ」
「ヴェー…さっきも言ったけど、何もないわけじゃないでしょ?ただ君が思いこんでて、自信がないだけでしょ?」
いつもへらへらと笑っているフェリシアーノが少し真面目な声音で話す。
「友達がいないと思っているのは、君が周りを"友達"だと思っていないからじゃないのかな?」
「…っ!」
「ヴェー、もしかして図星?」
クスクスと笑う姿はまるで子供のようだったけれど、彼の眼はとても冷ややかだった。
「でも…少なくても俺はさ君のこと信頼してるし、友達だと思ってるよ。」
「フェリシアーノ…」
「それに俺、君のそういうネガティブで自信がないとことか嫌いじゃないし」
目を見開く私に、フェリシアーノは、またくすりと笑った。
「世の中に君の考える"俺"みたいなやつがいっぱいいてもつまんないよ。そもそも国や人に"完璧"なんてもの無いんだから…君ぐらいのがちょうど良い」
わしゃわしゃと頭を撫でるフェリシアーノの手は温かかった。その温かさに少し瞳が揺れて、頬が濡れた。