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「詳しく教えてくれる?」
私の代わりに口を開いたのは最原くんだった。

「頭というのは様々な想念を受発信する霊的な器官なんだ。そしてその受信には自分の望んでいないものまで含まれている……死者の魂とかネ。その症状として身体のダルさや頭痛が挙げられるんだヨ」
背筋に冷たいものが走り、私は思わず自分の身体を抱きしめていた。

「その魂が……天海くんなのですか……?」
「彼が殺された時刻と名字さんの失神の前後関係は明白ではないから、その可能性が高いというだけで断言はできないけどネ」

私の身体の中に天海くんの魂が……?
そう言われてもピンとこない。困惑する私に追い打ちをかけるように、真宮寺くんはさらに言葉を続ける。

「憑依というのは誰にでも起こることではないヨ。憑依される側の体質や性格、また、憑依する側との波長も大事だ。名字さんは霊感が強かったりはしないかな?」

「霊感……?」
「名字ちゃんはよく"嫌な予感"とか"勘"とか言ってるよね。前にオレとゴン太をすぐに見つけたのも勘だって言ってたし」

確かにそうだ。
最初の頃、モノクマがエグイサルに踏み潰されて皆が安堵している中、私は嫌な予感がして一人で中庭を探索していたっけ。その時に初めて天海くんと話したわけだけど……。
ああ、どんどん憑依説の証拠が揃っていくばかりだ。


「それで、何者かが名字さんに憑依している……と仮定して、その何者かを取り出す方法はあるの?」
「あるヨ。そのためにここに呼び出したのサ。せっかくだから二人にも手伝ってもらおう」

名字さんはそこに座っていてくれるかな
という指示に従い約5分。
除霊の準備が整ったらしい。


「途中で気分が悪くなったりしたら右手を上げてネ。そのまま続行するのは危険だから」
「……わかりました」
恐怖と不安ですでに気分が優れないのだが。

「大変なことになっちゃったねー名字ちゃん。大丈夫?あの白蝋と同じくらいに顔面蒼白だよ?」
そうか……それは大変だな……。
どこか他人事のような感想を抱きながら顔を上げると、王馬くんの大きな瞳に紙のように白い私の顔が映っていた。


「名字さん……本当に大丈夫? 今ならまだ止められるけど……」
「ダメだよ最原ちゃん! 名字ちゃんに憑依してる霊を祓わなくちゃ! もしかしたら天海ちゃんなのかもしれないんだよ? 天海ちゃんが、ずーーーっと、名字ちゃんに憑いてるかもしれないんだよ……?」
最後の言葉はやけにゆっくりと、一言一言最原くんに言い聞かせるように発せられた。
最原くんは渋い顔で言葉を詰まらせた後、そうだね……とだけ呟いて黙ってしまった。

さ、早くお祓いを始めようよ!と、王馬くんは目を輝かせて真宮寺くんを促す。

「除霊と言っても各地で方法は違うんだ。僕も民俗学に通じているとはいえ除霊に関してはほとんど初心者だから、簡単なものを試してみるヨ。あぁ……実践できる日が来るとはネ……」
頼むから恐怖を煽るようなことを言わないでほしい。


「ちょ、ちょっと待ってください……最原くん……」
私は最原くんのもとへ向かい腰につけているポーチを外した。
「ルーちゃんが巻き込まれたら嫌なので、預かってほしいです。いいですか?」
「うん……名字さん無理しないでね」
私はポーチを最原くんに渡した。
「はい……。ルーちゃん、行ってくるね……」
ルーちゃんと今生の別れのような挨拶を交わし、私は元の場所へ戻った。


そして、私は恐怖と緊張でガチガチに固まった顔を真宮寺くんに向けて首を縦に振った。

「怖かったら目を瞑っても大丈夫だから、身体の力を抜いてネ」
私は目を瞑り、できるだけ身体の力を抜こうと努力した。
「怖いかな? 肩に力が入っているヨ」
正面から真宮寺くんの手が両肩に置かれる。
「名字さんに霊が取り憑いていなかったら何事もなく終わる。憑いていたら霊が抜けるだけのことサ」
そうは言われても怖いものは怖い。

私は深く息を吸い込み、吐き出す。
「そうそう。その調子」
真宮寺くんの手が離れた。そのまま正面からブツブツと呪文のような言葉をかけられる。


暫くして、パンッと何かを叩く大きな音がして、ビクッと肩が跳ねた。

「……どう?何か感じるかな?」
「……いえ、特に何も……」
私の身体は5分前と何も変わらない。身体が楽になったとか、逆に重くなったということもない。

「ちぇー思ってたより地味だなー」
「そうか……これがダメなら、頭から塩を被るという方法もあるから試してみよう」
「なにそれ面白そう!」
「いや! 遠慮しておきます……!」

このままでは真宮寺くんと王馬くんのおもちゃにされそうだ。真宮寺くんは他にも様々な提案をしてくれたが全て却下させてもらった。




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