07

ゆっくり……ゆっくりと目を覚ます。

最初に目に入ったのは、紫色の大きな瞳。


「おはよー。名字ちゃん。全然起きないから死んじゃったかと思ったよー」
ここは……自室?どうして王馬くんが……?

「えっと……皆は……?」
「皆は捜査中だよ」
「王馬くんは捜査しなくていいんですか?」
「せっかくゲームが始まったのに写真なんて証拠があってつまらなくなったからさ、捜査する気がないって言ったら名字ちゃんのおもりを任せられちゃったよ! くそっ、こんなことなら捜査してた方がつまらなくないよ!」
王馬くんは本当に悔しそうに悪態をつく。

「なんか……私のせいでごめんなさい……」
「あ、そう言えば最原ちゃんたちが、名字ちゃんの失神が今回の事件に関係してるのか調べたいから、意識が戻ったら教えてくれって言ってたなぁ」
「そうなんですか。わかりました。それなら早く最原くんに会わないとですね」

私はベッドから起き上がった。
直後、鋭い頭痛に足元をふらつかせる。

「……つっ……!」
頭を抑えて上げかけていた腰をベッドに戻すと、王馬くんが顔を覗き込んできた。
「大丈夫? 名字ちゃん?」
意外にも本気で心配してくれているような顔つきだ。この顔も嘘でなければ、だけれど。

「大丈夫です。頭痛がしただけなので。ルーちゃん、行こう」
私はまだ痛む頭を押さえて立ち上がり、ルーちゃんをウエストポーチに入れて扉の前まで進む。


「ねぇ、名字ちゃん」
「なんですか?」
私は後ろを振り返る。王馬くんはベッドサイドに立ったまま、こちらを見ていた。
「なんで、気を失ってたの?」
彼の顔からはなんの表情も読み取れない。それは彼が"真顔"という表情を作っているからか、それとも本当に純粋に疑問に思ったからなのか、私には判別できなかった。

「……。私にもわかりません。女子トイレに入ったところまでは覚えているんですけど……気がついたらベッドの上でした」

私は苦笑しながら、部屋の扉を開けた。



最原くんたちは1階の教室で待っていてくれた。
彼らにも、気を失っていた理由やそれまでの行動などを聞かれたが、彼らが期待してたような答えは返せなかった。

食堂を出てトイレへ行き、気がついたらベッドの上で寝ていた。私が話せるのはそれだけだ。
また、王馬くんの証言を足すと、私はトイレの個室に押し込められていたらしい。ルーちゃんが助けを呼んでくれたからすぐに見つけられたそうだ。


最原くんの事情聴取が終わったちょうどその時、学級裁判が始まるという放送がかかった。
私と王馬くんと最原くんと赤松さんの4人は裁きの祠へ向かう。

「王馬くんが私を運んでくれたんですね。ずっと様子も見てくれたみたいですし……ありがとうございます」
「名字ちゃんって見かけの割に重いんだね……オレの腕がもげそうだったよ……」
「え……!? そう……ですか……」
「なんて、嘘だよ! 名字ちゃん見た目からして普通に重そうだからね」
「その方がショックですよ!」
夢野さんと大して変わらない身長だと思うのだけど、乙女に対して失礼すぎる発言にショックを受ける。どの発言が本当で嘘なのかわからないとはいえ言って良いことと悪いことがあるだろう。
学級裁判の前だというのに普段と変わらない様子を見せる彼の顔を見ながら、私にもこれくらいの度胸があればいいのにと思った。


「名字さん! 体調は大丈夫なのですか!?」
茶柱さんの勢いに圧倒されつつ、私は笑顔を返す。
「はい。ご心配おかけしてごめんなさい。もう大丈夫です」
「天海君の死亡と、名字さんの失神……何か繋がりがありそうだネ」
真宮寺くんの言葉に身を固くする。そう思われても仕方がないが、あまり良くない目立ち方をしてしまって心が重い。
「それに関しては、学級裁判で話し合おう……」
最原くんがいつもより覇気がない声音でそうつぶやいた。




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