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「久々! 全員集合だね!」
ゴンの明るい声に思わず笑みが溢れる。
レオリオとも無事に再会を果たした。
レオリオは怒っていない、むしろ私に会いたがっているとキルアとゴンから散々に聞かされていたから、心の準備はできていた。
私が謝ると彼は、また会えて嬉しいと言ってくれた。それだけではなくレオリオは腕を広げて歓迎してくれた。素直にハグしようと歩み寄るもクラピカに押さえられてしまった。
お前の下心は見え見えだと、満面の笑みを浮かべるレオリオを押し退けるクラピカは、態度とは裏腹にとても落ち着いていた。
これで無事に全員と和解だ。仲間に迷惑をかけたくはないけれど、少しの間だけでもこうして会えたことが嬉しい。
ゆっくりと一人ひとりの顔を見る。
一緒にいるだけで元気になれるゴン、細かいことに気がついてくれるキルア、いざという時に頼りになるレオリオ、そして、仲間というものを教えてくれたクラピカ。
この4人の顔を見ているだけで、すり減った心が温かいもので埋まっていく。
この仲間が自分の中でこれほど大きな存在になっていることに気がつくと同時に、決して失うわけにはいかないと決意を新たにする。
「んで、本題に入ろうぜ」
そのキルアの一声で部屋の空気がピリリと引き締まる。
今回集まったのは、旅団の一人を倒したというクラピカに、能力の秘訣を聞くためらしい。
私はクラピカの強さについてすでに検討がついていた。制約と誓約の話は師匠から聞いている。
そして、私の念能力にも制約が課されている。
旅団を倒すほどの念能力。クラピカがどんな条件をつけているのか気になる。私は隣に座るクラピカに集中した。
「私の能力は旅団以外の者に使えない」
そう語りだしたクラピカの瞳からは、以前感じた静かに燃える闘志が見えた。
クラピカの誓約は、旅団でない者を鎖で攻撃した場合に命を落とすというハイリスクなものだった。
これはクラピカが自分で決めたことだ……。私に口出しする権利は全くない。けれどクラピカの旅団に対する憎悪の深さと覚悟を思うと、とても苦しくて心が重くなった。
「……なんで、なんで話したんだ! そんな大事なこと!」
クラピカが話し終えたと同時にキルアが叫んだ。
旅団の中に記憶を読む能力を持つ者がいるらしい。クラピカの能力を知ってしまった私達がその人に捕まれば、クラピカに勝ち目はない。
プルルルル
その時、私の携帯が鳴り始めた。画面に表示される名前に目を見開く。
「ヒソカだ……」
その一言で4人の視線が一気に集まる。
みんなに目配せをして、クラピカ達から少し離れたところに移動した。
「なに」
「名前、元気にしてる?」
「用件があるなら手短にお願い」
「リュフワと接触した と言っても遠目から能力を見ただけだけど」
「え……」
私は大きく息をのんだ。リュフワの能力……それは喉から手が出るほどほしい情報だった。
「彼はなかなか趣味が合いそうな男だけど、能力は戦闘向きじゃないね 一戦交えようと思っていたんだけどつまらなさそうだからやめておいたよ」
クククと私を嘲笑うかのような声が耳障りだ。
ヒソカはそれ以上のことは教えてくれなかった。
リュフワの能力は戦闘向きではない……それだけの情報でも作戦が立てやすくなる。
「それと、まだ彼とは連絡をとっていないのかい?」
ヒソカはここからが本題だとでも言うように声音を低くした。"彼"という単語だけで誰を指しているのかは分かった。あれだけ突っぱねておいて今更会ったと報告するのは躊躇われる。
「今一緒にいる……」
居心地が悪い思いで正直に答えると、ヒソカはそうかいと言ってまた笑った。私の心も行動も読まれているみたいでいたたまれない。
「じゃあキミに伝えておくよ。旅団の頭が死んだのは知ってる?」
「……うん」
ヒソカから旅団という言葉が出て身を引き締めた。じりじりと次の言葉を待つ。
「死体は偽物だ」
……驚きと頭の整理で何も返せなかった。
じゃあ彼にも伝えておいてくれと言ってヒソカが電話を切ってもそのまま固まっていた。
ゆっくりと携帯を下ろす。
「名前、どうしたんだ?」
私の様子を見ていたらしいクラピカに声をかけられてようやく振り向いた。
「旅団の……死体は偽物だって……」
私の小さな声を聞いて、4人が息をのんだ。
「能力者だ……旅団にはそういう能力者がいるんだ! くそっ……何故こんなことに頭が回らなかった……!」
焦燥で顔色を変えたクラピカが悔しそうに歯を食いしばる。
私もあの死体を間近で見ていたのに……私が気づいていたら……。
後悔してももう遅い。強く握りしめた携帯がミシミシと音を立てた。