23


私達が抱き合っていた時間はほんの数秒か。

私はハッと我に返り、勢いよくクラピカから離れた。
一瞬見えた彼の顔からは突然のことに驚いた様子が見て取れた。

突然突き放すような行動をとった意味を説明しなければ。でも、口にすると余計に恥ずかしい。

「ここ……公園……」
ようやく出した声は口籠ってしまった。
クラピカはその言葉の意味を探るように私の顔を見たまま黙っていたが、程なくして、あぁ、と頷いた。
「そうだな」
クラピカはそれだけを言うと私から離れた。

「よかった! 2人が仲直りして!」
顔にパイをたくさんつけたままのゴンが満面の笑みで喜んでくれる。
「オレ達と再開した時はハグなんてしなかったのにな」
キルアがニヤニヤと笑い、頬が熱くなってくる。

恥ずかしさを紛らわすように大股でゴンとキルアに歩み寄り、2人の首根っこを捕まえた。
「2人とも顔中にお菓子がついてる。洗いに行こう」


公園の水道で顔を洗う2人をぼんやりと眺めながら、頬の熱を冷ます。
白昼堂々、しかも公園のど真ん中でハグをするなんて……恥ずかしい。でもそれだけクラピカとの再開が嬉しかった。自分の気持ちを素直に表現するということは、今の私にとって大事なことだと思う。この仲間たちと出会う前は考えられなかったことだから。


気がつくとゴンが顔を洗い終えていた。水気を飛ばすために頭をフルフルと振っている。犬みたいだ。
「ゴン」
私は彼の名前を呼んで手招きする。

どうしたの?と歩み寄ってくるゴンの顔をタオルで拭いてやる。
「ありがとう!」
ゴンは満面の笑みで礼を述べた。ゴンの太陽のような笑顔につられて私も自然と笑みが溢れる。

「キルア」
今度は彼の名前を呼ぶ。……呼んでおきながら自ら歩み寄る。
彼は私が近づいてくるのを見ると、オレはいいから!と言ってそっぽを向いてしまった。
私まだ何もしてないのに……。タオルを構えたまま固まる。

キルアは先程の私とゴンのやり取りをじっと見ていたようだったので、同じようにしてほしいのかと思ったのだが……。
ハンター試験の時から思っていたけれど、たまにキルアの考えていることがわからない時がある。
またキルアの感情を読み違えたのかな……と肩を落とした。

私の様子を見たキルアは小さく息をつき、私の名前を呼んだ。
「名前」
顔を上げると少し困った顔をしたキルアがこちらを向いていた。
「別に拒んでるわけじゃねーよ……」
ぽりぽりと頬をかく彼の姿とその言葉に心が軽くなる。
大人しくするキルアの顔をタオルで拭いてやった。



「レオリオにも連絡を入れておいた」
「ありがとう!」
クラピカは私達を待っている間、レオリオに連絡を入れてくれたようだ。

「名前、なんだか嬉しそうだな」
クラピカが私の顔を覗き込む。
どうしてわかったのだろう。私は自分の頬を両手で挟んだ。
「うん、嬉しい」
そう言ってクラピカの方を向くと、目を大きく開いた彼と目が合った。
意外な反応が返ってきたので不思議に思う。
しかしその表情は一瞬で、彼はすぐに目を細め、私の頭を撫でた。

クラピカにこうしてもらうと安心する。
私は彼に微笑んだ。




[list]
×
「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -