17


ヒソカから手を組まないかと提案された。
疑り深く彼の顔を伺うが純粋にクロロと戦いたいだけのように見える。
答えに詰まっていると携帯電話が鳴り始めた。


捕まえた旅団の一人が逃げ出し、リーダーが殺されたらしい。


焦る気持ちと憎い気持ちを胸中に押さえ込む。

ここを去ろうとした時、思い出したようにヒソカが口を開いた。
「あ、そうだ 名前は元気にしていたよ」
思わず歩みを止める。
「名前に会ったのか……! 何を企んでいる!?」
ヒソカが名前と会っていたことに驚くと同時に心に漣が立つのを感じた。
「別に何も」
ニッと笑うヒソカの口が頬まで裂けて見えた。


やはり名前はヨークシンへ来ている。
剥製人形を取り返すのだろう。うちのボスも剥製人形をほしがっていた……。それが名前の……かつての仲間である可能性もある。リュフワもオークションへ参加しているのだろうか。
ヒソカが名前に何かを吹き込んだことは疑う余地がない。しかし、彼から何も聞き出せなかった自分が歯がゆい。

ハンター試験の彼女を思い浮かべる。
口数は少ないが仲間を大切に思っていた。
だからこそ他人に頼ろうとしない。迷惑をかけたくないから。
不器用だとも言える彼女の性格と、彼女の過去から考えて単独行動を取っているとみていいだろう。

そしてチクリと胸が痛む。
何も言わず忽然と姿を消した名前。
その安否を知れただけでも安心したが、すぐにもどかしくなる。自分も他人のことを言える立場ではない。

「くそっ……」

俺は足早に組のビルへ戻った。





*






昨日の騒動によりオークションは中止。
それでも私はセメタリービルの近くに身を潜めていた。

"可笑しな仮面をつけた奴"

その情報を集めるためだ。

ドールを使ってマフィア達の会話を盗み聞く。

そこから得た情報は昨日の奴らは幻影旅団らしいということ。
オークションの品が全て奪われたのだとしたら、剥製人形も彼らの手に渡ったことになる。取り返すのは容易ではないことを悟った。

リュフワに関する情報は得られなかったけれど、幻影旅団のことが気にかかっていた私は情報収集を中断し、マフィアと幻影旅団が激突したらしい現場へ足を運んだ。しかし当然何も手がかりは残されていなかった。


むやみに動き回っても仕方がない。作戦を練り直そう。


それにしても幻影旅団か……。また彼らと関わることになるとは思いもしなかった。同時に、昨日見たクラピカの後ろ姿を思い出す。彼もここにいるということは、幻影旅団と接触するつもりなのだろう。

私としては幻影旅団の登場で大幅に予定が狂わされたので頭が痛いばかりだ。オークションが再開されないという可能性も視野に入れなければならない。


そんなことを考えながら歩いていると、後ろからキキッと急ブレーキを踏む音がした。

すぐに振り返る。
車が接近していることに気づかなかったなんて。その車は私からは離れた位置に停車していた。
気をつけなければ。作戦を立てることに没頭しすぎていたようだ。

私は臨戦態勢を取ってその車を凝視していたけれど、その車は止まったまま動き出す気配がない。中に人がいるのか疑わしいほど静かだ。

ヘッドライトの灯で中にいる人が誰なのかはわからない
けれどリュフワではないはず。
もし彼ならあんなふうにこちらを窺うように車を止めたりせず、逃げるスキもないうちに私を攫っていきそうだ。


私も詰めが甘い。
リュフワは私を見ている。
もっと警戒心を持たなければ。


その車の主が動き出さないことを確認して私は逃げるようにその場から走り去った。



[list]
×
「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -