本日の運勢チェック




隊室の真ん中に設置されたテーブルに無造作に置かれた雑誌。見覚えのある表紙からそれがこの前撮影したボーダー特集が組まれた時の雑誌だとわかり手に取った。
ソファに腰掛けパラパラとページを捲り、嵐山隊の四人が並んでいる写真のページで手を止める。

戦隊モノのような構図が我ながら何度見てもかっこいい。戦隊モノで言えばレッドにあたる位置にいるのはもちろん隊長である嵐山だ。その嵐山は次ページで一際大きく紹介されており、また嵐山隊のファンが増えることは必至である。既にファンの人にとっては永久保存ものだろう。


素晴らしい記事の余韻に浸りながら続きのページをパラパラと捲っていると、最後の方のページに今月の占いが載っていた。

各星座について、恋愛運、仕事運、健康運が星一つから五つで占われているようだ。
自分の星座であるつるぎ座は恋愛運、仕事運、健康運すべてにおいて星三つ。誰に言う程でもないものすごく微妙な結果だ。ついでに時枝や綾辻の運勢も見て、最後に嵐山のペンギン座もチェックする。


そこにあった結果に、これは報告しなければとオレはソファの背もたれから身を起こす。


「嵐山さん」
「なんだ?」
テーブルを挟んで向かい側で書類仕事をしていた嵐山が顔を上げる。オレは堪えきれずにニヤニヤと口角を上げていることを自覚しながら目の前の彼に雑誌の占いページを突き出した。


「嵐山さん今月恋愛運が最高らしいですよ」


隣に座る時枝の刺さるような視線を感じるが気にせず続ける。

「相手を褒めるとさらに運気アップ!」

そこまで言ってオレは、雑誌を彼の方に向けて机の上に置いた。目の前の嵐山はその雑誌を目で追って、ゆっくりと顔をオレの正面に戻す。その間オレは、やけに静まり返った空気を感じ何かまずいことを言ってしまったかと頭に疑問符を浮かべる。

「そうなのか」

ニコリとオレに向かって微笑んだ嵐山は、佐鳥はどんな運勢だったんだと問いかけてくる。空気を察して聞き返してくれたのだろうか。その優しさはさすがであるし嬉しかったがそうではない。

「オレは星三つでした。そんなことより嵐山さんですよ!」

息まくオレを前に対して彼はこてんと首を傾げる。これはもしや本気でなんとも思っていないのだろうかと焦ったくて地団駄を踏みそうになるが、なんと説明すればいいものかうまい言葉が出て来ず口をむぐむぐと動かすことしかできない。どうしても嵐山から名前の名前を引き出したかったオレの浅はかな考えは、少し天然な部分がある嵐山には通用しなかったらしい。

どうせ頭を捻ったって妙案は思いつかない。
ええいままよと勢いに任せて口を開く。

「恋愛運最高ですよ!」
「ああ」
「嬉しくないですか?」
「うーん、嬉しくないわけではないが」

苦笑いを浮かべながらも話に付き合ってくれる嵐山はやはり優しいと思う。わけがわかっていない彼を話に付き合わせるのが何だか急に申し訳なくなってきた。これ以上聞くとさすがに嫌がられるとオレでもわかる。意気込んでいたオレもだんだんと尻すぼみしていて、最後にひとつ本当に聞きたかったことをポツリとこぼす。

「一生懸命頑張っていて、力になりたいとか褒めてあげたいと思う相手、嵐山さんは思い当たらないですか?」

わかる人からすればもはや誘導尋問に近い問いかけ。嵐山が気づいていないだけで潜在的に特別に想っている人がいるのなら、頭の中でその人を思い浮かべるはずだ。それが名前であってほしいと、チラリと彼の様子をうかがう。

「褒めてあげたい相手……」

どうせまた褒めたい相手はお前たちだと、嬉しい反面少し残念な返答がくると思っていた。
しかし意外にも嵐山は真剣な顔で考え込んでいる。

その反応を見た瞬間、オレは自分の行動が間違いではなかったのだと息を吹き返した。


もしやオレ、ナイスアシストだったのでは!


ここは畳み掛けるしかないと、眼光をオオカミのごとくギラリと光らせる。

「嵐山さんもしかして今、っふが!」
「はい終了」

名前さんのこと思い浮かべました?

そう問おうとしたもののそれが声になることはなかった。代わりに隣に座る時枝に口を塞がれ、もがもがと間抜けな音を発するしかない。

何故止めるのか不思議に思うも、いつの間にかオペレーター室から顔をのぞかせていた綾辻にもため息を吐かれた。全く解せない。

「何してるんだ?」
いつの間にか通常運転に戻っていた嵐山が、口を塞ぐ時枝とそれを外そうとするオレの攻防を見て声を上げて笑う。


もう話を戻せそうにない雰囲気にがっくりと肩を落とす。あと少しで嵐山の口から名前の名前が出てきそうだったのに。
どうして皆、二人を見守っているだけなのか不思議で仕方がない。

オレは早く二人がくっつけばいいと思っている。
だって二人はオレが大好きな人たちで、とってもお似合いだから。
仲睦まじく二人が並んでいる姿を想像して、オレはだらしなく頬を緩めるのだった。



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