「ん〜、どこだあ?」
ガサゴソと棚を探るが目当てのものは見つからない。私は正直片付けがあまり得意ではなく、出したものを元に戻さない傾向にある。書類が山ほど積まれた机、出しっぱなしの充電器。その顛末がこれだ。
国近から借りたゲームをやり終えたので返そうと思ったのだが、ゲームを終えてから3日、その短い間にゲームソフトは忽然と姿を消してしまった。
ゲームを終えたあとすぐならゲーム機のすぐそばに置いてあるはずだ。他に持ち運ぶ用事もないのだから。しかし今回は別だ。国近に返さなければと思って別の場所に移動させたのが仇となった。自分の行動を顧みても全くその所在に思い当たるところがない。
「ねえ、名前さん」
「んーちょっと待ってね、出水」
もうすぐ見つかるはずだから〜と間延びした返事で捜索範囲を棚からダイニングテーブルの上に移す。
私の返事に対して出水は大人しくソファに身を委ねている。客人がいるにも関わらず探しものだなんて非常識だとはわかってはいるが、彼の顔を見たら思い出したのだ。国近のことを。しかもソフトを返すと約束していたのは明日だ。
出水には悪いがもうちょっと待ってもらうしかない。
本来そこは食事を摂るはずの場所であるダイニングテーブルの上に積み上げられた書類をとりあえず椅子の上に置いていく。
「我ながら酷い有様だよねえ」
ため息をつき苦笑いをこぼす。出水からの返事はないが暇を弄んでスマホでも見ているのだろうと特に気にはしなかった。
崩れない程度に微妙な均衡を保っていた書類を抱え次の椅子に下ろそうとした時、ぎゅっと腰に何かが巻き付いた。
「名前さん」
驚いて振り返ると、視線よりかなり下の位置で腰に腕をまわしている出水がいる。その顔は眉を下げ不安に満ちていて、膝立ちをしていつもより身を小さく縮こまらせている姿は小さな子どものようだ。
「あー……ごめんね出水」
手に取ったばかりの書類をテーブルに戻しよしよしと頭を撫でると、不安そうな顔が少し歪んで眉間のシワが深くなる。
巻き付く腕の力が強くなり、ぎゅっと締められる。
機嫌悪くしちゃったかな。
己の行動に反省しつつどうやって彼の機嫌をなおそうかと彼の腕をぼんぽんと叩く。
すると出水の拘束がゆるくなりほっとしたのも束の間、出水はがばりと私のインナーをたくし上げ、腰に顔を埋めた。
ちゅ、と軽く音を立て2、3回腰にキスを落とされる。
「ひゃっ! くすぐった……」
彼の突然の行為に驚いたというよりも、くすぐったさに我慢できず出水の顔を押し返す。
「ねえそれ今やらないとだめなの」
唇を突き出して拗ねた表情の出水はわざとなのか天然なのかじとりと細めた目で見上げてくる。
「あーもう……ごめんって、出水」
思わず彼の頭を抱え込み抱きしめる。
「じゃああっち移動しよ」
さっきまでのしおらしい出水はどこへやら。
私の手を取りソファへ向かう彼の顔はニヤリと楽しそうに歪んでいた。
腰 束縛