支部の者が本部に来るのは珍しい。だから、本部内で不意に支部の者を見つけると思わず声をかけてしまうのだ。
「あ! 空閑くん!」
「お、名前さん」
今日も例に漏れず、ひょこひょこと動く白い頭を廊下の先に見つけた瞬間に名前は声をかけていた。
振り向いた彼は名前の姿を確認し立ち止まる。
「また影浦くんとランク戦?」
「そんなところだ」
「ほーんと気に入られてるねえ」
あの影浦くんが積極的に人と関わるなんて、感慨深くてホロリときそうだ。
「そういえばこの前オサムが名前さんの瞼にキスしたと聞いた」
「あ、あーうん」
彼の擽ったいほど純粋な心を思い出しまたキュンと胸が締め付けられる。瞼にキスって結構ドキドキするよね。そういえばまだ三雲くんを美味しい店に連れて行っていない。
「名前さん、ちょっと屈んでほしい」
「え、うん」
突然どうしたのかと首を傾げながらも140cmほどの彼の要望どおり屈み、視線を合わせる。
瞬きをした間に、頬に柔らかく温かい感触。
ぽかんと口を開けてその頬に手を当てる。唖然とする名前の顔を見て空閑はニヤリと口の端を釣り上げる。
「つまんないウソつかない名前さんは結構好きだ」
「え、あ、はい」
今度、三雲くんと千佳ちゃんとまとめてご飯に連れて行こう。
頬 親愛