不器用の扱い方


「玲、ちょっといいか」

呼ばれて部屋から出てみると、謎のダンボールを持っている着流し姿の土方さんが立っていた。

ダンボールには見慣れた洗剤の名前。きっと中身も洗剤なのだろう。問題は、なぜ土方さんが洗剤を持っているのかということ。しかも私服で。

「実は手違いで武器倉庫の方にこいつが届いちまって…こいつ、いつも何処にやってるのか聞こうと思ってな」

「なるほど…私がやりますから、いいですよ」

「これ、重いぞ」

「…は?」

「だから、重てェんだよ!お前に持てる重さじゃねぇ!」

まーたはじまった。土方さんの過保護。
仕事廃人の土方さんのことだ。せっかくの非番なのにやることがないのだろう。今朝近藤さんが、トシには久々の休みを楽しんでもらおう、なんて言ってみんなに土方さんに仕事まわさないようにしてるのを見たから、間違いない。

「じゃあ、お願いします」

「お、おう」

「こっちまで、お願いできますか」

いつも私が持っていってます、とは言わないであげた。
掃除用具などがしまってある倉庫に案内して、ダンボールをおいてもらう。

もう仕事はないし、これで土方さんはまったり過ごせる…そう思い土方さんを見ると、土方さんがちらちらとこっちを見てくる。

普通に言ってくれていのに…と若干呆れつつ声をかけてみた。

「どうかしましたか」

「お前…、今日休みか?」

「はい、そうです」

「どっか、行くのか」

「?…いえ、予定もないので部屋で本でも読もうかと」

「その…よ、」

何を言いたいのか悟って、私は土方さんの言葉を待ってみた。でも言い出せないのか黙り込んでしまったので、仕方なく私から言ってみる。

「土方さん、私映画を見に行きたいんです」

「!」

「でも一人で見に行くのもなーと…1人寂しく映画も恥ずかしいので。えいりあんVSやくざ、新作出たんですよ。続きが気になって」

「い、一緒に行くか…?」

「いいんですか!?」

「俺も今日は1日暇なんだよ」

「やった…!荷物とってきますね!」

にこっと笑って自分の部屋に向かう。
長い付き合いなのだ、こっちが折れてあげないと行けないということも分かっている。
仮にも昔好意を寄せていた相手だから尚更。

「お待たせしました!いきましょうか」

「おう」

隣を付かず離れず歩く。適度な距離感が丁度よくて、小さく笑った。



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