貴方達のおかげ


「今日も精が出るな、また手荒れちまってんじゃねーか」

「土方さん、おはようございます」

真選組は多くの人達の手によって支えられているのたが、支えている人達の中でも一番近いところにいるのが女中達だ。

その女中達の中でも、屯所に住み込みで働いてくれている女性達は、ワケありだったり、問題をかかえているような人が多いように思える。

今トシが話しかけている女中さんの玲ちゃんだって、実はワケありなのだ。

「おはようございますじゃねーよ、ちゃんと手入れしろって言ってんだろうが」

「でも大丈夫ですよ!ほら、荒れてはいますけど赤切れとかは……痛っ」

「たった今赤切れしたじゃねーか、言わんこっちゃねぇ」

「ご、ごめんなさい」

攘夷戦争の際行動を共にしていた侍達とはぐれ、身体中傷だらけになりながら真選組を立ち上げるために江戸に向かう途中だった俺達に助けを求めてきた。

(どうか、殺さないで下さい…!)

(俺達が何もしないで通り過ぎたとしても、お嬢さんはこのままじゃ死んじまうだろうよ)

(ですが、私はまだ…)

(生きたいたなら、俺達と一緒に来るといい)

怯えた瞳で俺を見ていた玲ちゃんは、今では心からの笑顔を見せて笑ってくれる。
今では料理も格別にうまくなっちまって、隊士達からの評判もいい。

「ちゃんと手当しろよ」

「はい」

特にトシは年が近いのもあり、仲がいいらしい。
何かと世話を焼いているのをよく見かけるし、玲ちゃんもトシを頼りにしているのが見て取れる。

「近藤さん!」

「おお!おはよう玲ちゃん」

「おはようございます」

「手、大丈夫?ザキにあとでハンドクリームとか持っていかせるから!」

「大丈夫ですよこれくらい」

「俺が大丈夫じゃないの!ちゃんと体は大事にしないとな」

平和な朝の会話と美味いご飯。隊士たちを支えているのは、玲ちゃんの…女中達の優しさなのかもしれない。



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