ゆめうつつ

「遅ェ」

「土方さん」

駅の改札を出ると、隊服姿の土方さんが立っていた。基本公私混同はしない土方さんが平日の昼間にこんな所にいるのが珍しくて、少しフリーズしてしまった。

「迎えに来て下さったんですね」

「足、大丈夫か」

「はい。お仕事中なのに、すみません」

「俺が、勝手に来ただけだろうが。謝んな」

「ありがとうございます」

「...おう」

私の手から荷物を何も言わずに奪うようにして持ってくれた土方さんは、照れ臭いのか目を合わせてはくれない。少し足が傷んでゆっくりになる歩みに気が付いたのか、土方さんは耳まで真っ赤にしながら私に腕を差し出した。

「掴まれ」

「土方さん、照れすぎです」

「うるせぇ」

そっと腕に掴まると、じんわりと土方さんの体温が伝わってきた。
不器用な優しさに胸の中のもやもやが溶かされたような、そんな安心感にも似た感覚。この人のこういうところが、好きだったんだ。

「パトカーで来たんですか?」

「ああ、今はパトロール中って事になってる」

「総悟のこと、もう怒れませんね」

「今回は特例だ」

駐車場にとめられていたパトカーの助手席に乗って、土方さんの運転で屯所まで。
屯所までは20分くらいで着くのに、土方さんのせいで安心して少し眠い。寝ろ、と頭をくしゃくしゃと撫でられて、そのまま目を瞑った。

眠りに落ちる前に、土方さんが誰かと話している声が聞こえたような気がしたけれど、それが現実なのかは、判断できなかった。

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