飼い殺し
ヒリヒリする足を若干引きずりながら帰路に着く私は、とても浮かない顔をしているだろう。
とても実りある1週間で、得るものがとても多かった。なのに胸の中にいつまでも張り付いてとれない想いが一人になった途端急に存在を主張して、思考を鈍らせる。
車窓から見える景色を楽しむ心の余裕はなくて、山崎さんにメールで聞く勇気も出ずに停滞し続けていた。
気にしてはいけないのだと思う。その銀髪の侍が銀時であっても、私は絶対に会いには行かない。生きていてよかった。そう思うだけ。
でももし、銀時に何か理由があって私をおいていったのだとしたら、今でもあの約束を守ろうとしてくれているのであればどうだろうか。
一時でも、土方さんに想いを寄せてしまった私は、銀時を裏切ったのと同じ。
そんなことどうでもいい、と振り切って料理に一途になれるような人間ではない自分が醜いように思える。言葉なんて簡単なものだ。言ってしまえばこっちのものか。信じてしまえばその言葉は鎖になるのだから。銀時は私を縛るための鎖をかけただけに過ぎないのだ。鎖をかけて、そのまんま。
所詮、飼い殺しだ。
江戸が近いことを知らせるアナウンスが聞こえて、きっと怖い顔をしているであろう自分の顔を軽く叩いた。
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