集中、集中
また非番がやってきた。
今日は一日休み。土方さんもお休みらしくて、昨日の夜またちらちらとこっちを見てきたんだけど、私は料理の勉強を優先させるためにあえて無視した。
言葉にして誘われたわけじゃないし、嫌な女だって思わないでくださいね。
今日はパスタでも作ろう。そう思ってキッチンに立った。パスタを茹でて、パンチェッタを炒めて。
銀時っぽい人がこの街にいると知って、すこし私は焦っていた。
別に会いたいわけじゃないし、あの約束忘れたのって問いただすのはなんか女々しい感じがして嫌だし、それに、料理で人を幸せにするとか言ってた奴が自分の店も持ってないなんて、かっこ悪い。
これは私の意地で、決意でもある。貴方が約束を破っても私は守っていたい。そういう思いと、純粋に料理が好きという思い。全部がごっちゃになってて、ちょっときもちわるい。
「…何が、したいんだろ」
ぽつりと誰もいないキッチンで呟いてみた。私は何がしたいんだろ。
あーもう、答えなんか出るわけないでしょばーかばーか。
出来上がったカルボナーラは、少し味が薄い。きっと生クリームを入れすぎたんだろう。
からんと菜箸をシンクに転がした。集中なんか、できやしないよ。
土方さん、今頃何してんだろ。
頭の中でちらつく銀髪をかき消すように土方さんを思い出してみたけど、完全に銀色は消えない。
皿に盛られたカルボナーラが、なぜか滑稽に見えた。
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