さよならできない




問題児で結構。そう思っていた時期が私にもありました。

担任の先生を困らせて、廊下に立たされて、最後には親のすねをかじって生きていく。そんな私の決められたレールに従うことが最重要課題。アカデミーに来たのは忍になりたかったからでもなくて、親に行けといわれたからで、卒業したら親の仕事を継ぐつもり。

下忍で結構、落ちこぼれでも後ろ盾があればどんな英雄よりも強くて偉くなれるの。その証拠に私は下忍なのに、こんなに大事にされてる。

「ねぇ、そう思うでしょ、カカシせんせ」

私にそんな価値観を植え付けた親を怒ればいいのに、なにその反抗的な目。嫌い、本当に嫌い。
これだから、才能がある人って、自分の力を評価されてる人っていやなのよ。

「カカシせんせいだって、私のことが大事なわけじゃないんでしょ」

大人って、汚いもんね。

そう言うと、カカシ先生は私の櫛でとかされた髪を乱すように撫でて、目の下にキスをした。

「お前がそう思うなら、そうだよ」

なら、カカシ先生に大事にされてるって思ったら、そうなの?
ほらね、大人って汚いんだよ。答えを提示してくれない。

「せんせいが子供だったらよかったのに」

先生に抱きついて、そう呟いてみた。私を抱きしめてくれる先生は、耳元で、とても小さな声で、「オレも、そう思うよ」と囁いた。その言葉が今まで聞いたどんな甘い言葉や愛の告白よりもまっすぐで崇高なもののように思えて、抱きつく力を強めた。