全部教えて

「今日も泊まりにくるでしょ」
「今日はいいや、明日早いし」
「なんで」
「友達と遊びに行くの、久しぶりに」

ぎゅー、と腰に抱きついてくるカカシの手を自分の体から外した。別に付き合っているわけではないのだ。…付き合っているわけじゃないんでしょ?まぁ私にもよく分からないまま関係が変化していってるわけで。
付き合っているのか、体だけの関係なのか、私にも分からないままだらだらと続いている。

「オレより友達の方がいいの」
「最近会えてないから、顔くらいみたいじゃん」
「オレはお前の乱れた顔が見たいんだけど」
「外で言うセリフじゃないでしょ、今ヤマトドン引きしてる顔してたよ」
「いいじゃない、減るもんじゃないんだし」
「ヤマトの中では何かが減ってるかも」

普段は私から誘ってる。家行ってもいい?とか、明日任務?とか。その度にカカシが、「シたいの?」って聞いてきて、「うん」って言うと優しく笑ってくれる。なんかこれだけ聞くとセフレって感じだ。この関係は所詮体だけなんだろう。

「その友達って男?」
「なんでそんなこと聞くの」
「そりゃ気になるでしょ」
「…男だけど」
「……そう」

なに、なにこのやり取り。付き合ってるみたいじゃん。なんだか慣れないしむず痒い。なんなの、カカシさん、どうしたんすか。ちょっと不機嫌そうな声音に少しだけぞくりとした。

「オレが許すと思う?」
「許さない理由がないでしょ」
「は?」
「別に付き合ってるわけじゃないんだしさ」
「なにいってんの、お前」

わあ、不機嫌MAXって感じだ。
元々この関係が始まったのだって私が誘ったからだった。お酒に酔ってて、勢いで、そのまま。カカシのことは好きだったけど、抱かれてしまえば感じてしまうのは確かな征服感と、手に入ったという満足感だった。関係に名前はないけど確かにカカシは私のものになった。もうそれだけでよかった。

「私、カカシに好きとか付き合ってとか、言われたことない」
「言わないと分かんないわけ?一体いくつよ」
「分かんないよ、言わなきゃ」

振り向いて、まっすぐカカシの目を見据えた。カカシは目を伏せて、ばつの悪そうに言葉を発していく。

「遊びで家に誘ったことなんてないし、軽い気持ちで手を出した覚えもない。お前と違って」
「何その言い方」
「お前と違って浮気なんてしないし、同期とか後輩とか友達なんか優先しない」
「何が言いたいのよ」
「だから、好きだって言ってんの」

オレと付き合って。

そう言って不安そうな目で私を見たカカシの表情にやられた。なんなの、もう。
ちょっと呆れてしまうくらいに、この人は不器用だった。

「今日、泊まりに行く」
「ちゃんと言ってくれないと分からない」
「言わないと分かんないの?いくつよ」
「三十路一歩手前」
「可哀想だから私が貰ってあげる」
「もっと可愛げのある言い方できないわけ?」

悔しかったから、隠しきれないくらい赤く染まった顔で

「ずっと、傍にいてよね」

そう言ってカカシに背を向けた。なんの反応もなくて内心焦っていたのだけど、しばらくして

「…いきなりは反則でしょーよ」

なんて言ってるのがきこえてきて、私はまだ赤い顔をどうにかできていないから、振り返ることができないままでいる。



(遠まわしじゃわかんないの)