水面下の攻防

馬鹿のフリをするのにも慣れて、平和な顔をして笑うことに抵抗がなくなった。
個性というものを消して世界に馴染んでいく事を非難される筋合いはないし、それに気付いたとしても深くかかわらないでいてほしいの。

だから、私には嫌いな人がいる。

「ナルトくんは、頑張り屋さんなんだね」

言葉だけならタダだから振りまいて、わかったフリをして寄り添ってあげる。本当は微塵もわかってないくせに。


「そういってくれんの、なまえちゃんだけだってばよ」


私だけ、なんて笑っちゃうわ。ヒナタがどんな思いで君を見てるかもしらないくせに。雄飛に照らされた教室と、チープな恋愛映画みたいなセリフ。そんなものに流されるような馬鹿な女じゃないよ。


「みんな、見てくれてるよ」

「なまえちゃん、俺」

「ほら、鍵閉めるからはやく帰りなさいよ、下校時刻過ぎてるんだから」

「…はたけせんせー」


ほんと、いつもご苦労様。
私が安い自分を誰かに売ろうとするとすべて未遂で終わるのは、このセンセーのせい。
私がどうなろうと、私がなにしようとしったこっちゃないでしょうに。


「なまえは残って」

「えー、私なんかしましたっけ?」

「いいから」


ナルトに手を振って見送ると、いつもより鋭い目で私を見るセンセーが嫌い。

「もうやめにしたら」

何度言っても聞かないし知ったこっちゃないわ。


「よくわかんない」


甘えたような声でそういえば、追求はされない。

ほんと、嫌な世界だ。

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