相手の事を考えることが愛なら、オレは愛することができない馬鹿な男だ。

「さよなら」

その言葉の重さが分からない筈がない。
好きなだけでは傍にいることはできない。欲しいだけで手を伸ばしてはいけない。自分を犠牲にする覚悟がなければ、本当に欲しいものは手に入らないものだ。

気持ちに蓋をさせて、無理やり俺の方を向かせたのは欲しいだけで手を伸ばしたから。なまえの気持ちに気付かないフリをして傍にいたのは自分を犠牲にしてなまえの幸せを願うことができなかったから。

お前がどんな気持ちでそんな言葉を使ったのか、完璧に理解することなんてできない。今更後悔しても何にもならない。分かってるんだよ、そんなことくらい。

「好きなんだ」

自分のエゴに従って動いた、利己主義なオレをお前は受け容れることなんてないと分かっていたのに。汚い部分を隠したまま傍にいることなんてできないと知っていたのに。オレは所詮太陽にはなれない。なまえを輝かせる光には、なれない。

もし、こんなオレの気持ちが消えてなくなる事があったとすれば、それはお前にとって最高に幸せな事なんだろうな。

「愛してる」

誰もいない部屋で、なまえの残り香を感じて、確かに傍にいたんだと実感してももう遅い。

届く相手のない言葉は、部屋の無機質な壁に反響してゆっくりと溶けた。



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