「嫌いになった」
「うん」
「大嫌いだよ、お前なんか」
「知ってる」
「オレなんかを好きなお前なんか、嫌いだよ」
なのに、お前がネジに好かれてるのを見てたら、もっと嫌いになった。
カカシは最低でしょ、と自嘲するように笑って、やっと私の顔を見た。
懐かしむように私の髪を撫でるカカシが何を思っているかは、私には分からなかった。
「テンゾウにね、言われたんだ。いつ死ぬか分からない身なのに、いつまで待たせるつもりなんですかって」
「テンゾウがそんなこと、」
「その後に綱手様に長期任務の事を聞いてね、気付いたら会いに行こうとしてた」
「ガイに化けて?」
「オレがそのままで会いに行っても、何を話せばいいか分からなかったんだよ。衝動的に会いに行ってもオレは何も言えないし、なまえが欲しい言葉も分からなかった」
「私が酷い事言ったから」
「オレが酷い事言ったからだよ。……でも、ガイに化けて正解だった」
「全然似てなかったけどね」
「騙されてたくせに」
良く考えたらガイはあんな時間に起きてないし、あんなローテーションじゃないし。
話の内容が内容なだけに少し恥ずかしくなって俯く。髪が顔を隠してくれるから、少しはマシな気分だ。
「伝わらないって言ってたけど、オレには痛いほど伝わったよ。だから待ってたんだ」
「テンゾウに化けてね」
「何年経ったと思ってんのよ、もうオレの事どうでもいいとか思われるんじゃないかと思って」
「そんなこと思うわけ無いでしょ、何言ってんの」
「本当は術を解かないでずっとテンゾウでいようと思ったんだけどテンゾウがなまえといるんだと思うと面白くなくて」
「ほんとは、そんなんじゃないでしょ」
「やっぱり、分かっちゃうか」
「……無理して、そんな安心させようとしなくてもいいよ」
久しぶりだからって、カカシが無理してるって分からないわけないじゃない。
別に、そんなすぐに昔みたいに話せるようになると思ってるわけじゃない。
小説とか、物語の中みたいに簡単に人の気持が綺麗なまま寄り添えるなんて思っていないから。
「なまえ」
「ん?」
「幸せにしたい」
何を、なんて質問はいらなかった。
「もう傷付けたりしない」
「……いや、正直な所まだ自信はないんだけど、もう辛い思いはさせないようにする」
「どんなに変わっても、根っこまでは変わらないんでしょ?なら、二人で変わっていこうよ。もう一人でお互いの事で汚い想い抱えなくていいように」
「オレの根っこは、結局あの時からずっと変わってないから」
「ずっと、好きだよ」
我慢して、一歩引いて見て、自分の気持ちを押し付けたりしない。それが、大人っていうものなのだとしたら、私もカカシも、子供のまんまだ。