「どんだけ心配かければ気が済むんだよ、お前」
私の前に現れたカカシはテンゾウが変化したカカシと全く同じ姿をしていた。少し息が荒いのは、急いで探しに来てくれたからだろうか。
そんな筈ないか、カカシが私なんかを探しに来るわけない。
「どうして、」
そう呟いてから、ある仮定が浮かんだ。もしかすりと、今までのは本当にテンゾウじゃなくて、 カカシが
「…帰るよ」
「……嫌だ」
「そんなこと言える立場だと思ってんの?」
いくらそんなに殺気飛ばされても、はいわかりましたで帰れる程物分かりがいい女じゃない。
独りは嫌だ。もしかして子供の頃のカカシも同じだったんじゃないかな、なんて思って自嘲した。なんだ、カカシも私も分からなかったんじゃない。
「ねぇ、カカシ」
ずっと、貴方だったんでしょ。
そう聞いても、カカシは何も答えてはくれなかった。ただ黙って私の周りに無造作に置かれている松葉杖を拾ってから、私を抱き起こした。
「……帰っても、独りなんだよ、私」
私を背負って病院に向かって足を進めるカカシの背中は冷えた私にとっては暖かくて眠気を誘う。
帰りたくないのだ。独りであの部屋にいるくらいなら、仲間に懺悔して、仲間のそばにいた方がいい。
「オレがいるって言ったら」
ふわふわ、ゆれる銀色。
二本の松葉杖が小さくぶつかり合って聞こえる木の音。
鼓膜を震わせるカカシの声。
「……カカシは、そんなこといわないよ。テンゾウ」
「……ほんと、嫌な女」
「それ、はじめて言われた」
「もう遠回りしたくないから、素直に聞いてよ」
月の光は、やっぱりカカシに似合う。