最近色々歪み過ぎていると思う。
可愛がって甘やかしまくってた後輩が元カレに化けて恋人みたいなやり取りしてるって、こんな説明したら紅とかに絶対怒られる。自分でも分かっているつもりだ、よろしくないって。
……それでも甘えてしまうのは怪我のせいか、私の精神力が弱いせいなのか。
結局のところ、忍ではなくなった私が生活する病室の中は私ひとりだけの世界なのだ。みんな遊びに来てはくれるけど私の悩みとか、考えとか知らないわけで。
私が病院を抜け出して仲間の墓参りをしようとしているのは、独りに耐えられなかったからだ。
松葉杖をついて人目を避けて裏口から病院を出て、真っ直ぐお墓に向かって歩く。
花なんて買う余裕はないから、何も持ってこれなかった。花を買ったとしても松葉杖で両手が塞がっているから、持てないんだけどね。
昼にラジオで聞いたチープな恋愛ソングをハミングしてみたりして、お墓で一番新しい墓石を探した。
墓石に彫られた名前を月明かりで見て、倒れないようにゆっくりと座る。今夜が満月でよかった。
松葉杖で地面に座るのは難易度が高くて、倒れるようになってしまったけれどこれはこれでアリだろう。
仲間の墓石に寄りかかって月を見上げてみた。
「ごめんね」
そういえば、今日の病院食あんまり美味しくなかった。
リハビリもきつかったし、テレビも面白くなかった。
「生きて連れて帰れなくてごめん」
一番ひどかったのはラジオのお悩み相談だ。元カレと寄りを戻したいとかそんなの聞かせないでよ。
「Ms.中途半端な私より貴方が生きてればよかったかも」
もう忍ですらないし、ね。
泣かないように思考をそらしてみてもだめだった、もうだめだ。
誰も見てないから泣けばいいのに、無駄に我慢したがる私。
生きてる友人達が遠い存在に思えるからって、死んでる仲間が近しいわけではないのに。
「中途半端」
言葉通り、ほんと、中途半端。
風が少し冷たくなってきて、身震いした。
羽織るものを持ってくればよかったかもしれない。
寒いけれどあの病室にすぐ帰る気にはなれないから不思議だ。一人の病室は嫌い。
月を見上げてぼーっと時間を潰すしかできなくなるなんて、思わなかった。
「何してんだよ馬鹿」
「……カカシ」