それから、テンゾウは毎晩のように私の病室にやってきた。窓から入ってこれるように鍵をあけて待っている時に、死んだ仲間のことを考えたりすると胸の中が真っ暗になったような感覚に陥るけれど、テンゾウがくるとすぐに笑顔になれた。
「いらっしゃい」
テンゾウは、いつも来てから変化の術でカカシの姿になる。
忍であることができなくなった私を元気づけるためにカカシになるという考えは正解だけど、私の執念にも似た感覚がテンゾウに見透かされていたことは恥ずかしいことでもあった。
今日もテンゾウはカカシになって、私のベッドに腰掛けて他愛もない話をする。
「今日は松葉杖で歩けるようになったんだ」
「なら、そろそろ外にも出れるようになるね」
「やっとだよ。歩けるって素晴らしい」
「倒れないように気を付けるんだよ」
布団の上から私の足に優しく触れるカカシは、やっぱりテンゾウが化けてるとは思えないほどカカシに似ていた。
もし、カカシがテンゾウに化けて来て、今変化の術を解いてるだけだとしたら?なんて考えてしまう。
……また、期待しちゃってるんだなぁ、私。
「カカシは何かあった?」
「待機室でガイに絡まれた」
「いつも通りだね」
「ほんと、元気なやつだよ」
本当にカカシなんだとしても、私は何も言えないんだろうな。
「ねえ、本物のカカシみたいだね」
「……違いますよ」
「……うん、知ってる」
だから今はその言葉を信じて、このままの距離で。