「なまえ」
「……四代目?」
「だめじゃないか、こんなところにいたら」
心地いい気分だった。
川のほとりをまったり歩いて、忍とか私生活とか全部忘れてぼんやりして。
懐かしい人に会えて、私死んだんだなぁとなんとなく悟ってしまった。
「仲間を守るためにロクに体鍛えないで八門遁甲使ったんです」
「体の負担は凄まじいものになるだろうね」
「ええ、死ぬほどね」
笑えないよ、とちょっと怒って言う四代目はイケメンで目の保養になりました。久しくイケメンなんて見てないから感激。
「きっと、今必死で意識戻したとしても体は使い物になりませんよ」
「まだわからないじゃないか」
「分かります。自分の体ですから。きっと、忍に戻ることなんてできない」
「今まで忍として生きてきたんだ。普通の人として生きていくのは辛いと思うけど君が生きている事で救われる人もいるはずだよ」
「四代目は、私に生きて欲しいんですか?」
「勿論。そうじゃなかったらこんなに必死で追い返そうとしないよ」
「私から忍であることを取ったら、ロクなものが残りません」
「そんな筈ないと思うけどな。カカシが大事にした女の子だからね、君は」
「今は、嫌われちゃってますけどね」
「カカシは、自分が嫌いになっちゃったんだと思うよ。自分を好きにならなきゃ、人を好きになることなんてできない。自分の美点を美点だと思えないと、人の美点を美点だと認識できないんだ。」
「ほんと必死ですね四代目」
「茶化さないで真面目に聞いて欲しいんだけど」
「茶化してませんよ?」
「なまえ?」
「ごめんなさい……」
この歳になって先生から怒られるなんて思わなかったよ……。
背中をトン、と押す四代目の微笑みは、昔密かに憧れていたあの頃と同じで、私は仕方なく、前に歩き出した。
「頑張れ」
「……結局、何が言いたかったんです?」
「簡単に言うとね、案外相手も同じこと考えてるようなものだよってこと」
「……はい?」
「時間切れだ。じゃあね、なまえ」
ほんと、掴めない人だ。