「長期任務、ですか?」
「うん。だからしばらく会えなくなるね」
修正もきかないくらいに歪んだ関係をそのままに、私は里を離れなければならなくなってしまった。
一人の人間である前に忍。だから、別に任務なんて構わないんだけど、記憶の中で笑うあの人の面影に涙が出そうになった。ああもう、女々しい嫌だ嫌だ。それでも、私は忍である。
「ガイにはまだ言ってないんだ。言ったら五月蝿いから」
「言うべきです」
「ギリギリで言うよ。別に二度と会えなくなるわけじゃないんだし」
「死んだら会えませんよ」
「死なないよ」
「分かりませんよ、そんなこと」
「分かるの。自分の事だからね」
自信の無い自信。自信がつくような努力ができるほど優秀でもなくて、自分を信用できるほど素直に成長することもできなかった。
それでも周りの人を傷付けないようにと自分の意思を表面に出さないことだけは人より優れているといえるだろう。
私はいつでも中途半端。大事にすることの意味を、全部受け入れることだと勘違いして、あの人を傷付けた大馬鹿者。
私は一人の人間である前に忍である。
そう思っていないと、罪悪感で押しつぶされてしまいそうで。
「待ってます」
「いつ帰ってこれるか分からないけど」
「ずっと待ってます。だから、帰ってきたら、その時は」
「ネジ」
最後まで言わせない。そんな私は狡い大人でしょうか。
「待たないで」
子供の頃、大人になりたいってずっと思ってきた。
でもいざ大人になると、大人なんてロクなもんじゃないね。