「テンゾウ……?」
「お久しぶりです」
「え、ほんとにテンゾウ?」
「どうして疑うんです」
「なんか、老けたね」
「……はぁ」
何故か疲れているらしいテンゾウが外したお面を、私は今貸してもらっている。
血の滲んだ面なんて、触らない方がいい。なんてカッコイイことが言えるようになったテンゾウの頭を撫でようと手を伸ばそうとしてやめた。
伸ばしかけた手を見て、
「やっぱり馬鹿ですね」
とすべてを見透かしたように言ってわたしの頭にすっかり男の人のものに成長した手を乗せて微笑んだ。
ほんと、いい年の取り方したね、テンゾウは。
「まだ諦めてないんです」
「やっぱ、暗部出身の人ってしつこいね」
「相手がなまえさんだからだとは考えないんですか?」
「なんか、キザっぽい」
「えっ」
やっぱ、即席じゃ誤魔化せませんか。なんて言って苦笑するテンゾウくんは昔の面影をちらつかせていて、なんだか安心した。
「なんでわざわざお面取ったかわかる?」
「ええ。貴方も人の事を言えないくらいキザだ」
「嫌いになった?」
「まさか」
面をつけるために手を伸ばした。
背が少し伸びたテンゾウの顔に面をつけると、思ったより近い距離に心臓が跳ねる。
これは、浮気にカウントされますか、カカシくん。
腰に腕を回されて、そのまま仮面越しにキスが落ちてきた。
「望むなら、いつでも共犯者になってあげますよ」
「……ばーか」
ほんとに、テンゾウも馬鹿。