「最近帰りずらいっていうか」
「上手くいってないのか」
「んー、そうでもないんだけど」
なんだそれ。うん、そう言いたい気持ちは分かります。でも仕方ないんです。
教え子との会話も楽しいし、同僚はいい人ばかりだし。でも、彼氏さんがね……。
「なら、泊まるか?」
「……え?」
「オレ独り身だし、かまわねぇけど」
「いや、カカシくん待ってると思うし、いいよ」
「無理すんなよ?まあいつでも言ってくれよ」
不知火くんはいい人だ。優しいし、まあぶっきらぼうではあるけれど。
流石に外泊はまずいよね、彼氏持ちだもんね。
それにきまずいのだって、私の気の持ち方の問題だし。
カカシくんが悪いなんて言えないのが、なんだかなぁ。
「……よし、帰ろ」
「送るか?」
「いや、いいよ、大丈夫」
「もう遅いし危ないだろ」
「大丈夫だよ。まだ日付変わる前だから」
心配そうな不知火くんを押し切って自宅に向かって歩く。
お酒は飲んでいないから足取りもふらふらしてないし、月がきれいだからなんだか楽しくなってきてしまって。
「はやく、帰ろ」
まん丸の月を見てたら、カカシくんを思い出した。一度、ちゃんと話し合ってみよう。そうすれば怖いなんて思わなくなるかもしれないし。
月を見上げるのをやめて、早足で歩き出そうとしたけど、それはできなかった。
「一緒に、帰ろう」
丁度月が雲に隠れた時に、声が聞こえた。