「慎重なヤツだよ、ってカカシくんは言ってたけど、そうでもないの?」
「そうですね、若いですから」
「今いくつ?」
「20です」
「若っ」
二十歳と言えば黒歴史の年じゃないか。思い出したらなんか病んできたかもしれない。
若いんだし私なんかよりいい子が現れるだろうに。なんで私なんかのところに来るんだろうか。
家に帰ると家の中でお面とヘッドギアを外したテンゾウがお風呂借りました、なんて言ってしれっと私の楽しみにしていた缶ビールをあけていたからびっくりを通り越してげんなり。
追い出す気にもなれなくて一緒に晩酌してるわけなんだけど、こいつは一体何を考えているのか。
追い出す気にならないのは年下だからっていうのと、頭のいいこの子は私に手を出しては来ないということが分かっていたからだった。
私もお風呂入ったから二人してお風呂上がりなわけで、これで何もない方が不思議な状態なんだけど。
「二人で宅飲みしたってカカシくんが知ったらうるさいかもよ」
「だから、秘密ってことで」
「嫌だ」
「言えないでしょう?」
「どうして?」
「カカシ先輩が傷付くんですよ」
カカシくんが、傷付く。
なんだかさよならを告げた日のカカシくんを思い出して、なんだか胸がざわついた。
なんだ、知らないうちにカカシくんも、大事な人の枠の中に入っていたんじゃないか。
「……そうだね」
目の前の茶色の髪をわしゃわしゃとかき混ぜれば、抵抗しないでもっと、と頭を差し出してくる。
その反応に少しだけ好意を感じてしまい、姉にはなれないことを悟ってしまった。