「ガイは、親友だから、好きだけど」
「……そう」
馬鹿で、ほんとーに馬鹿で、優しい。ガイは好きだ。それでも、親友としての好き。
なんではたけくんにそんなこと聞かれなきゃいけないんだろうか。
煮立ってきた鍋に、ルーを投下しながらそんなことを考える。
もしかすると、はたけくんは恋に悩んでいるのかもしれない。もしかすると、私のことが好きなのかも……。そう考えて、やめた。
そうだとしても勘違いで終わりそうだし、なんかばかにされそう。
「カレー、好きなの?」
作らせてるくらいだから好きなんだろうな、と思ってこちらから話しかけてみた。滅多に私から話しかけることなんてないから、凄くレア。私、がんばった。
「べつに」
「じゃあ、なんで作らせたの」
「ガイが、羨ましかったから」
「そっか」
「……それだけ?」
「え、ご、ごめん」
鈍い、そうつぶやいた声が聞こえたけど、何のことか考えるのが嫌になってやめた。
カレーをよそってあげて、急いで帰り支度をはじめる。ガイがいないのにはたけくんと話してるなんて、なんか慣れなくて変な感じだし気まずい。
「ねえ」
「は、はい!」
「好き」
何が、そう聞こうと振り返った途端、腕を引かれた。今日ははたけくんに腕引かれる日なんだなあとぼんやり考える間もなく腕の中に閉じ込められて、胸が跳ねた。
「ずっと、好き」
その言葉で、何が、なんて言えなくなってしまって、男らしいはたけくんの体つきに嫌でも自分の性別を思い知らされた。
もう、子供の頃みたいにガイと走り回ることもできない。
みんな、大人になるのだ。