見つめる
今日は珍しく突然呼び出されることもなく、平和な休日を過ごせるような気がしていた。
外は雨で、多くの人は外出もできないとがっかりしてそうだけど、私は違った。しかし、別の意味でがっかり…いや、げんなりしている。
「不器用にも限度ってもんがあるでしょ…」
自分でもげんなりするくらいの出来栄えのストラップ。なんだろうこれ、ビーズの塊?え?塊魂?そんなゲームあったなぁ懐かしい。
いや、そうじゃなくて。何をどうしたらこんなものができるのか小一時間くらい問い詰めたい。あ、自分を問い詰めるの無理だ。どうしよう。
最初はうまくいっていたつもりだったんだけど、気づけば…うん。
無理だ。プレゼントなんてできない。自分の不器用さが嫌になる。
「…はぁ」
テーブルにビーズでできた得体のしれないものをおいて、私はコーヒーを淹れようと立ち上がった。
あまり飲み物にはこだわらないタイプなのだけど、佐々木さんが来るようになってからはちゃんとドリップして淹れている。
前までインスタントコーヒーをざばーっとやってどばーとやっていたのに…いや、ざばーっとやってどばーってなんだ。自分で言っててもよくわからなくなってきた。私疲れてるのかもしれない。
甘いもの食べたいなぁと棚を探してみると、前に編集長からもらったちんすこうがあった。コーヒーとちんすこうってなんだそれ…またちょっとげんなりした。げんなりレベルがあがった。
誰かいきなりお菓子を持って現れないかな…
そんなことを思っていると、いきなりインターフォンが鳴った。誰だろう。
「はーい。どちらさまですk…すいません間違えました」
ちゃんと確認してからあけない私も悪いけどこれも悪いと思う。なんでドアを開けたら銀さんがいるのよ。このマンションセキリュティーどうなってるの。
「いやいや、間違えてないから。ほら開けろケーキあるから」
「ケーキだけおいて帰れください」
「駄目ですぅー。ケーキと銀さんは一心同体なんだよ」
「…はいはい」
げんなりレベルが、とてつもない勢いであがっていった。
見つめる
(何ケーキだろう…ショートケーキがいいな)
(ケーキの箱ばっか見てないではやく入れろよ)
(はいはい)