懐かしむ
「あ、土方君」
「玲」
昼休み。久しぶりに早起きして作ったお弁当をいつもの公園で食べていると、見廻りの途中っぽい土方君と出会った。
土方君の見廻りルートにこの公園はバッチリ入っているらしくて、結構な頻度で土方君とは出会う。
会う度に無駄にいい声で反応に困る台詞を言うから正直困っているのだけど、いい友人として相談に乗ってくれたりするし、嫌な人じゃないから嫌いにはなれない。
あ、でもマヨネーズは微妙だ。マヨネーズがなかったら嫌いじゃないレベルだったけど、マヨネーズ込みだから嫌いにはなれないレベル。
マヨネーズも嫌いじゃないんだけどコレステロールとか気になるお年頃ですからね…
「見廻り御苦労様。副長」
「一般市民の平和を守るのが仕事だから当然だ」
「なんか警察っぽい…!」
「警察だからな」
「警察なの?!」
「今更言うのかそれ」
私の座っているベンチの隣に腰かけて、煙草に日を付ける土方君。
なんだか今日も平和だなーと思っていると、私のお弁当に向けられる視線に気付く。
「…何?」
「それ、手作りか?」
「まぁ、一応…」
「…そうか」
いや、手作りですよ?冷凍食品にも手伝ってもらってますけど卵焼きとか頑張って作りましたよ、眠かったけど。
まぁでも花嫁修業と考えれば悪くはないよね!あ、花嫁…
…花嫁かぁ
いいなぁ、ウエディングドレス…って、危ない危ない。妄想に呑みこまれるところだった。
「…食べる?」
「いいのか!?」
「いいけど…マヨはやめてね」
さっきから視線が痛かったし、別にお弁当くらいいいかなーと思いちょっとだけ分けてあげることにした。
妄想に呑まれようとしている間でも分かるくらいの視線ってどんだけですか土方君。
流石鬼の副長伊達じゃない!みたいなそんな感じですか。
「…上手い」
よかったつまようじ入れといて。
流石に箸を供用はアレだもんね、うん。
一口一口大事に食べてる土方君を見て、今度お弁当作ってあげようかなぁと思ったりなんかして。
「美味しいなら何よりです」
「まぁ、アンタが作ったなら不味いワケがねぇ」
「…あ、ありがとう…?」
まったく、返しに困ることを言うんだから。
…この公園にいると、たまーに思い出す。
あの時、過去形で告げた言葉に嘘偽りなんてなかったけど、もしもあの時私が過去形ではない形で告げていたら…。
…なんだかそう思うと、私の決断は間違いじゃなかったんじゃないかなーって思う。
今こうして土方君と普通に…まぁ、ちょっとアレな時もあるけど、会話してる時とか
佐々木さんからのメールに幸せを感じちゃってる時とか。
…うん、やっぱりよかった。
「ありがとな、上手かった」
「どういたしまして。見回りいってらっしゃい」
「…おう」
もしも、なんて考えるのは意味がないかもしれないけど、ちょっとだけならいいよね?
懐かしむ
(さて、お仕事お仕事!)