惚れる



悩んだ挙句、なんの報告もせずに日曜日を迎えることになってしまった。バレたら私嫌われるかもしれない、そう思うとハラハラで死にそうになるけど、もう仕方ない。

どうせやるなら本気出せ、と数年ぶりに袖を通したピンク色の着物。普段青系が多い私には結構な勇気のいる色である。
髪は結い上げて、メイクもばっちり。もう地味とか言わせないんだからね。あの天然パーマめ。

『お出かけしてきます!メールの返信遅くなっちゃうかもしれません』

そうメールを送って待ち合わせ場所へ向かう。家康像の前ではいつもどおりの銀時の姿。私を見つけて手をひらひらと振っている。

「ぶーぶー言う割に気合入ってんじゃねーの」

「どう?似合う?」

「いいんじゃね?お前普段から髪結んどけばいいのに」

「めんどくさいんだって。察してよ天パ」

「へいへい」

とりあえず行くか、と銀時に手を差し出されて戸惑いながらもその手をとった。
うわー、あの銀時と手なんか繋いでるよ、あとでアルコール消毒かな。

いや、佐々木さんで消毒しよう。もうそろそろ限界だ、誰か私にオアシスを

「玲さん」

あれ、恋しすぎて幻聴が

「浮気現場を見られてスルーですか」

「…本物?」

幻覚でも幻聴でもない、実物等身大佐々木さん100%の佐々木さんだ。銀時と繋いでいた手を光の速さで解いて、佐々木さんに駆け寄った。

「ゲッ」

「これはこれは坂田さん、人の恋人を利用して利益を得ようなど考えるとは相変わらずお金に困っていらっしゃるようだ」

「玲、おめーコイツに話したの?素直系女子なの?」

「話してないよ!」

「エリートの情報網をなめないでください」

あ、玲さん似合っていますよ。でも私は髪は降ろしている時の方が好きです。撫でるのに躊躇しなくていいので。 なんて恥ずかしいことをいつものように真顔で言っている佐々木さんに一人で頭ぱーんとなりそうになっていると、先程まで銀時と繋がれていた手に佐々木さんの手が重ねられていた。

驚いて佐々木さんの顔を見れば、消毒です。となんでもないように言われてさらに私の頭はぱーんってなりそうに。


「とにかく、今日は信女を貸しますから、玲さんは返してもらいます」

「いや、お前んちのも結構目立つだろうが」

「デートって、相手の財布を使ってなんでもしていいって異三郎が」

「おいてめー部下になんて教育してんだ発言が悪女のそれじゃねーか」

「行こう、マスド」

「いや、目的地違っ…ちょ、引っ張んなって!!ちぎれるううううう」

銀時を強制連行する信女ちゃんを見送って、私は佐々木さんとふたりぼっち。
予定がたった今潰れて、これからどうしようと考え始める。

「…佐々木さん」

「はい、どうかしましたか」

「お仕事終わったらでいいんで、一緒に過ごしませんか?」

「…ええ、よろこんで」

ふっと笑われて、またノックアウトされた。



惚れる


(佐々木さん、惚れ直しました)
(異三郎です)
(あ、忘れてた…!)
(次名前で呼ばなかったらお仕置きですね)
(え、えええええ)
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