あーあー聞こえません。私はなんにも聞こえません!
目の前で銀髪の綿毛がなんか人の言葉を話しているけどなーにも聞こえませんー。
「銀さんのバーカ!人外ヘッド!」
「人外ヘッド?今人外ヘッドって言った?あっるぇー銀さんついに幻聴が聞こえ始めたわ、まさかマイハニー玲がそんな事言うはずねぇし」
「現実見るネ銀ちゃん。確かにいま人外ヘッドって言ってたヨ」
「うっせエエエエエエ!!銀さんが言ってないって言ったら言ってないんですぅー、主人公だから!!」
「あーもう…いい加減にしなさい人外ヘッド!」
「やばい!!幻聴が!!幻聴がかなりクリアに!!」
「…銀さん?」
「はい、すいませんでした」
やったね、形勢逆転。
いまなんでこんな状況になってるのかと言うと、私が銀さんの指定した門限に10分遅れて帰ってきたから。…ま、まぁそれプラス私が土方さんに送ってもらったっていうのと、今朝いちご牛乳買ってくるねって約束したのに買ってこなかったっていうのと、明日お妙ちゃんとお泊り会するって言うのを伝え忘れてたのが一気に銀さんを刺激してしまったからだ。
「じゃあ落ち着いて話し合おうか」
「はいはいはい!!まず俺から!」
「はい銀時くんどうぞ」
「いちご牛乳はどうしたんですか!」
「帰る途中に買おうと思ったら土方さんに偶然出会って、万事屋まで送ってくれるって言うのでお言葉に甘えたら買いに行けませんでした。はい、次の質問は?」
「お泊り会の事を俺に言わなかったのは?」
「お泊まりが決まった時に銀時酔ってたから…」
「お妙にはお泊まりが決まったのは4日くらい前だって聞いてんだけど?俺4日間酒飲んでないんだよなぁ、これが」
「そ、それはー、」
「なんで4日もあったのに言わなかったのかなぁ、玲チャンは」
もう、後がない。銀さんの顔がドSモードに移行してる。やばい、私万事休す。
助けを求めるように神楽ちゃんを見ると、新八くんが銀さんの不機嫌を悟って神楽ちゃんと志村家に帰ろうとしていた。やめろ!空気を読むんじゃない!!カムバックメガネ!!
形勢逆転したと思いきや追い詰められていたのは私の方で。
神楽ちゃんと新八くんがいなくなった万事屋には私と銀さんの二人しかいなくて、しかも銀さんは若干どころかレベル8くらい怒ってるし、私ピンチです助けてください。
「…銀さん、私がどっか泊まりに行くと不機嫌になるから」
「だから言わなかったってか」
「…ごめん、なさい」
「土方は」
「…土方さんとは、なんにもないよ」
「今夏夜遅くまで出歩いてンじゃねーよ、治安がいいとは言えねぇんだし」
「…はい」
「土方がいなかったらお前無事に帰れなかったかもしれねぇわけだ。しかも送ってもらって10分遅刻ってことは普通に歩いて帰ってきたら30分くらい遅れてたろ。門限が何の為にあるか分かってんの?」
「ごめんなさい…」
「しかも土方に送らせてんじゃねーよ。遅くなりそうなら俺を呼べばいいじゃねーか。今日は依頼ないって知ってたろ」
「でも、急な依頼とか入ってるかもしれないと思って」
「電話もかけずに勝手にそう思って帰って来ようとしたわけか。嘘つくんじゃねーよ。大丈夫だと思って電話かけてこなかっただけだろ」
「その通りですごめんなさい…」
「ったく…こっち来い」
ソファに腰掛ける銀さんに近付くと、銀さんに引き寄せられて膝の上に横向きに座らされた。
少し怖がっているのがバレたのか、銀さんがため息をついた。
「反省したか?」
「うん」
「もう門限破らねぇって誓うか」
「うん」
「よし、ならいい」
心配させんな、と頭を撫でられて、やっと緊張がとけた。
銀さんに体重をあずけて寄りかかる。
「なんか…銀さんに大事にされてる感じがする」
「大事にしてんだから当たり前だろー?銀さん玲に何かあったら死ぬから」
「死んじゃだめだよ」
「いいや、死ぬね」
「もー…同棲しててこれって…。結婚したらどうなっちゃうのよ」
「家からださねぇ」
「過保護!」
機嫌も直ったみたいで、ちょっと安心。
今度からは気をつけよう、うん。
「泊まりに行くの禁止な」
「…え」
愛されてるのは幸せなことだし、銀さんに不満もない。だけどちょっと過保護すぎる気がするのは気のせいだろうか。