この恋、きみ色





今思えばおかしい婚約も、土方君とこうして出掛けたり、ご飯を食べたり呑みに行ったりしている今を考えればよかったんだと思う。


佐々木さんはアドバイスをしてくれるし、練習相手にもなってくれる。

勿論前にキスの練習を迫られた時には断ったけど、会話をする時とかのコツも流石エリートというべきかとても為になるもので。

それに佐々木さんは当たり前だけど男の人だから、男の人目線で意見をくれる。それも感謝している。


「…空が青いなぁ」


雲ひとつない青空。私の心の中をそのまま表したようだ。

土方君との待ち合わせ場所まであと5分。待ち合わせ時間まであと10分。五分前行動ばっちりだ。


今日は一緒にお昼ごはんを食べてから町をぶらぶら。目的なんてないから時間には余裕がある。

デートなんていう可愛げのあるものとはいえないけど、お互い満足。

この前出掛けた時は流れで手を繋いでしまったけど、それは土方君の気まぐれだろう。

私はあくまでも友達で、恋人じゃないから。



「あ、メール…」


きっと佐々木さんからだ



―――――

from さぶちゃん

sub 明日ですが


明日なんだけど、玲たん時間ある?

一緒にお買いもの行きたいお☆

二人にとって大事なものだから早めに用意したいお…

メール返信してネ


――――


二人にとって大事なもの?なんだろう…

っていうか、相変わらずメール弁慶だなぁおい!


――――

sub 大丈夫ですよ


大事なものってなんですか?


あと、明日は何時からがいいですかね?

時間とか待ち合わせ場所とか決まったらメールください。私はいつでも大丈夫ですからね


――――


相変わらず色気がない自分のメールに苦笑い。

佐々木さんの方がまだ可愛げがあるメールなんじゃないかな…


「おい」

「あ、土方君。今日も相変わらずだね」

「誉めてんのかそれ。…行くか」

「うん」


土方君は私より2こ下。ちょっと年下なんだけど、やっぱり男の人だから背は高い。

でも年下って感じがしない土方君に、自分が幼いんじゃないかと感じる。いや、そんなことはない筈。…たぶん。


「…なぁ、ずっと思ってたんだが…」

「ん?」

私の隣を歩く土方君は、今日は着流しだ。

隊服姿しか知らなかった私は初めて見たときに結構驚いたけど、今は結構慣れてきた。

相変わらず黒とか紺がお似合いで。隊服より色気が出ててるような気がしなくもない。やっぱりモテる男っていうのは違うのかもしれない。


「女ならもっとこう…洒落た店に行きたいとかないのか?」

「え、何いきなり」

「別に…。ほら、アレだろ。いっつも行きつけの定食屋だろ」

「でも美味しいし。お洒落なところだと緊張して味が分からなくなっちゃうんだよね」

なんだか納得しない土方君に、ちょっと恥ずかしいことを言ってみる。


「それに、土方君がいればどこでもいいや」


我ながら恥ずかしい…勢いに任せて言ってみたけどやっぱり恥ずかしい…

でも、男はこういうのに弱いんですよ。って佐々木さんも言ってた。


「ばっ…恥ずかしがるくらいならそういうこと言うなって」

そう言う土方君の頬は染まっていて、ああ照れてるんだなぁって直ぐに分かった。


「別に恥ずかしがってなんかないし…。あれ?鬼の副長さん真っ赤になってますけど?」

「これは…アレだ、暑いんだよ今日は」

「へぇー」

「いや、ホントだからね?これは暑いからであって決してそういう…」

「はいはい行こうか土方君」

「話を聞けェェェェ!」


ちょっと後ろで騒いでいる土方君を置いて、ちょっと早歩きになる。

からかってみたけど、私も頬が赤いんだ。


年上の余裕なんて、あったもんじゃない…







この恋、きみ色


(土方君、まだ赤くなってる)
(なってねぇ)
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