好きかも、しれない







ああ、完全に二日酔いだ。


お妙ちゃんを介抱しながら私も結構飲んじゃったからな…


そういえば、寝ちゃった後土方君どうしたんだろ。


「…おはよ」

「…ああ」

「なんだ、帰らなかったんだ」

「流石に疲れたんだよ、俺も」

「そう」


意識が完全に覚醒してくると、私が座布団を3枚並べた上に寝かされて、布団をかけられていたことが分かった。

これやってくれたの土方君?それとも新八君?どっちにしてもありがとう。


「…土方君、時間いいの?」

「時間…?あ、やべっ」

何気なく時計を見ると時間は8時を回ったところ。きっと土方君は遅刻だろう。やーいやーいざまみろー。


「いってらっしゃい」

「おう」


さて、二度寝でもしようかなと思ってもう一度横になると、直ぐに新八君が来た。

寝かせてください、頭痛いんですマジで…







目を覚まして、しじみの味噌汁を飲んでいると土方君の忘れものに気付いた。

見事に携帯忘れてるじゃん。家帰る途中に屯所寄ろうかな。

いや、でも土方君なんかの為に屯所まで行くの嫌だし…


あ、そうだ


「もしもし、総悟君?」

『おや、玲さんから連絡くれるなんて珍しいですねィ』

「土方君、携帯忘れて行ったんだけどさ、どうすればいいか聞いてくれない?」

『おっと、昨日土方さんがいないと思えば玲さんと熱い夜を過ごしていたとは…』

「違うから、そんなんじゃないから」

『あ、残念ですが今土方さんは綺麗な女とデート中でさァ。携帯なら自分で届けに行ってくだせェ』

「デート中って…非番なの?って、おい!明らかに君楽しんでるだろ!切るなってば!」


あっけなく切られた電話に溜息をつきながら、自分の手の中の黒い携帯電話を眺めた。

デートねぇ。あの土方君が。


女の影なんてありそうでなさそうな土方君が。


なんかちょっともやっとしたけど、気のせい気のせい。

メールで送られてきた土方君の居場所を元に、携帯を届けに行くことにする。

届けたら、近藤さんがお妙ちゃんに殴られるまで、私が何かと関係している事件が起きるまで会えない。

隣同士でいるのは心地いいけど、所詮繋がりなんてそれくらい。

別に、不満なんてない。

寂しいなんて、思ってない。







「総悟くん嘘ついてなきゃいいけど…っと」


携帯の地図を頼りに歩いて行くと、そこには総悟くんの言った通り綺麗な女性と一緒に歩く土方君の姿。

マジだったんだ…。

ま、別にどうってことないよ?

アイツも男だし、彼女くらいいるでしょ


…デートの中携帯届けるのも、嫌だなぁ。気まずいなぁ。


でも、ずっと持ってるワケにもいかないし。


私の右手の中で、持ち主と離れ離れにされた携帯が眠っている。

ずっとこのままでも仕方がないと声をかけようとしたら、女の人が土方君の腕と自分の腕をからめた。


あーあ、いちゃついちゃって。見せつけてくれるじゃないの。


右手で携帯が振動した。

液晶を見ると、総悟君からだ。


「もしもし」

『携帯、どうしやすかィ?』

「屯所に持っていくよ。流石に声をかけられる雰囲気じゃないし」

『分かりやした。ザキに渡してくだせェ』

「了解」


頭の中で、いちゃいちゃしてる土方君と女の人がフラッシュバック。


あーあ、これ、もしかすると私






好きかも、しれない





(相手に恋人できてから気付くとか、私馬鹿でしょ)
(…あの人みたいに甘えてれば、よかったのかなーなんて)
(ああもう、私らしくない)
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