私はごく普通の一般人だ。
両親は田舎で元気に暮らしているし、私も仕事を頑張って1人で人並みに暮らしている。
顔も、体も、生い立ちも平凡。
そんな私には、変な知り合いがいる。
「お妙ちゃん、飲みすぎだって」
一時期やっていた夜の仕事で知り合ったお妙ちゃんという可愛い女性…いや、年齢的に言えば女の子。
お妙ちゃんはストーカー相手に毎日疲れっているらしくて、その愚痴を聞かされていた。
そのストーカーは私の知り合いの上司で、偉い人だったりするのだけどそこは深く考えないでおこうと思う。
「あーもう、新八君!お水持ってきてー」
私に抱きついて甘えるお妙ちゃんはもうべろんべろんに酔っている。
そこはかとなく色気が漂うお妙ちゃんを見て、きっとストーカーも興奮しているだろう。だって荒い息が聞こえるもん。
「姉上、玲さんの迷惑になっちゃいますから離れ…」
「迷惑じゃないよ。でもお妙ちゃん、明日が辛くなっちゃうしそろそろ寝た方が…」
「まったくですな。ほらお妙さん、玲ちゃんじゃなくて僕に抱きついてください」
「「………」」
何を当然のように会話に入ってきてるんだろうこのゴリラ。
「近藤さん、いい加減にしないと警察呼びますよ」
「いや、玲さんこの人が警察なんですけど」
携帯のアドレス帳からある人物に電話をかける。
この時間に電話なんて迷惑かもしれないけど、きっと変に律儀な人だからちゃんと出るだろう。
「もしもし」
『切るぞ』
「切るな!土方君、近藤さん引き取りに来てくれない?」
「ちょ、玲ちゃんトシに連絡だけはやめてぇえええええ」
もう遅いです近藤さん。
『…今から行く』
「ありがとう。ごめんね」
『いや、こっちこそ近藤さんが迷惑かけた』
「ほら、いいから早く来て。現在進行形で迷惑かけられてるから」
『分かった』
電話を切って、新八君が蹴りまくってる近藤さんを見る。
こんな人が土方君の上司なんだと思うと、なんだか土方君がかわいそうになってきた。
でもきっと仕事は真面目にやってるんだろうなぁこの人。
よら、よく言うじゃん。普段いい加減な人ほど仕事は真面目にやるって。
「んー」
「ほら、お妙ちゃん寝ちゃダメだって」
「しばくぞ…ゴリラ…」
「夢の中までゴリラ…かわいそうに」
お妙ちゃんの頭を撫でていると、玄関が開く音がした。
ちなみに今の時刻は夜中の12時。あんまり五月蝿いと近所迷惑になってしまう。
「案外速いね」
「まあな」
「ゲッ」
逃げようとする近藤さんの首根っこをつかんで、土方さんは説教モード。
そんな2人を後目に私と新八君でお妙ちゃんを布団に運ぶ。
なんだか、同じ事を前にもした気がする。デジャヴってこういう事を言うのか。
「あれ、近藤さんは?」
「出てった」
「一人で?」
「お詫びにハーゲンダッツ買ってくるんだとさ」
「そうなんだ」
新八君が洗い物をしていて、部屋には私と土方君だけ。
なんだか散々疲れたからか、眠くなってきた。
「…土方君」
「なんだよ」
「なんか、お決まりの展開だね」
「…そうだな」
隣同士がいちばん自然
(あれ、玲さんは…)
(寝ちまった)
(綺麗な寝顔ですね)
(…だまってりゃ、マシなのにな)