公認ストーカー





あのパーティから結構経って、今はお正月休み。

久しぶりに実家に帰ってみるとお父さんは仕事仲間と旅行に行っているらしく不在だった。

ちなみにあのパーティから佐々木さんとは会っていない。やっぱり年末年始は忙しいんだろうか。あの人一応警察だし。

土方君も真選組の仕事が忙しいとかで会ってくれないし。あ、でも前よりメールは増えた。佐々木さんからのメールは減ったけど。


「ねぇ、玲」

「んー?」

「佐々木さんとはどうなのよ」

「どうって…何が?」


何よーとぼけちゃってー。なんてはしゃぐお母さん。

ごめん、期待してるようなことは起きてない!

「ほら、お母さんもお父さんもそろそろ孫の顔が見たいなぁーなんて」

「なっ…お、お母さん、まだ気が早いって」


っていうか孫って…な、ナイナイ。

ないって。ありえないって。私と佐々木さんの子供とかそういうのないって…。


こたつでミカンを食べる冬を満喫するこの時間にそんなこと言わないでくださいお母さん…。

それに佐々木さんには最近会ってないんだから。



結構前から気になっていたことがある。

それは佐々木さんが私と婚約した理由。


エリートの火遊びはパーティで婚約発表したりしてるから違うし。

土方君が嫌いだから、っていうのも婚約の条件の内容を見たら違うし。

私みたいな平凡な女と結婚したところで利益なんてないに等しいワケで。

私を利用しようとしているとか?いや、それもない。だって私に利用できる価値なんてないから。


…本当に、分からない。


考えても分からないことはあまり考えない方がいいんだと分かっているけど、でもそう片付けられるほど私は切り替えがうまくない。

聞いてみようかな…でも佐々木さんのことだから上手く逃げるんだろうな。


「佐々木さん、素敵な人よね」

「え?あー…まぁ、うん」

「よく連絡をくれるんだけど、とっても玲を大事にしてくれてるんだって分かるわ」


え?よく連絡?ちょ、佐々木さん何して…


「あ、誰か来たみたい」

チャイムが鳴って、お母さんが嬉しそうに玄関に向かう。

誰が来たんだろう。ま、誰でもいっか。


「あら、佐々木さんいらっしゃい」


あー、なんだ佐々木さんかー

そっかー…佐々木さん…か


「ってえええええ!?」

ささっ…佐々木さんってあの佐々木さん!?あのケータイ依存症の佐々木さん!?


「マスドのドーナツです。よかったらお召し上がり下さい」

「ありがとうございます。ちょっと待って下さいね。玲を呼んで来ますから」


呼ばなくていい!っていうか、なんで佐々木さんが私の実家を知ってるの!?

そこからまずおかしいでしょう!


「佐々木さん!」

急いで玄関に向かうと、何故か当たり前のような顔をしてお母さんと談笑をしている佐々木さんの姿。

しばらく会ってないなーと思ったらなんですかいきなり!


「玲さん、お久しぶりです」

「お久しぶりです。…じゃなくて!」

「お母さん、玲さんをお借りしてよろしいでしょうか」

「ええ。勿論いいですよ。もう一生貸します」

「お母さん!」


一生貸すって何、っていうかお母さんって呼ばないで下さい。

っていうか、なんでいるんですか。なんでそんなに親しげなんですか。

色々言いたいことはあったけど、お母さんに上着を渡され直ぐに家から追い出された。


上着のポケットに財布とかケータイとか入っててよかった…いや、よくないけど。


「…佐々木さん」

「はい」

「なんで私がここにいるって知ってたんですか」

「まぁ、それはいいじゃないですか」

「よくないです」





公認ストーカー



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(玲さん、カラオケ行きましょう)
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