ずるいから好きです





今日は何故か近藤さんに呼ばれて真選組屯所に来ている。


屯所に来るなんてことはあんまりないから、ちょっと緊張だ。


「こんにちは」

「あ、玲さんこんにちは。局長がお待ちですよ」

「はい」


山崎さんに案内されて屯所の奥へ。

隊士さん達に挨拶をされる度に、私ってなんやかんや言って偉い人と知り合いなんだなぁと思った。


…そういえば、私見廻組の偉い人と婚約してるんじゃん…

私の周り偉い人ばっかりだ、どうしよう。


「あ、そういえば聞きましたよ」

「何を?」

「婚約ですよ、婚約」


ちょ、え?

「あの…誰から?」

「近藤さんからです。」


あのゴリラ何言ってくれちゃってんの!?馬鹿でしょ、もう馬鹿でしょ。単細胞でしょ。


「いやー、青村さんが婚約って聞いて驚いちゃいましたよ。しかも相手は見廻組のs「シッ」

言わせない!これ以上広めてたまるか!

私的にはあんまり知られたくないんだから!っていうか、婚約したことを土方君に知られたら私もう希望ないじゃん!

…って、週末にその希望も完全になくなっちゃうんだけどね…


「あれ、秘密なんですか?」

「あんまり知られたくないの」

「婚約したのに、ですか?」

「婚約したからだよ」


複雑なんですね、としみじみ言う山崎さんに案内されて着いたのは近藤さんの部屋で、中では近藤さんがなかなか威厳のある感じで座っていた。

なんだ、やっぱり普段は威厳あるんじゃん。


「ザキ、お茶とお茶菓子」

「へい。ただいま」


よく来てくれたな、と笑う近藤さんはやっぱり局長なんだなぁと思わせるほどにまともで

見廻組とはまた違う魅力のある、とても居心地のいい場所だと感じられた。


「よく、来てくれたな」

「はい。…それで、今日はどのような要件で?」

「…玲ちゃんは佐々木殿と婚約しているんだろう?」

「はい。色々ありまして」

「よかったら、真選組と見廻組の交友関係を築く手伝いをしてくれないかなー…なんて」

「無理ですよ。だって婚約って言っても…」


不確かな婚約ですから。

なんて言えるはずもなく


「ほら、この前うちと見廻組とドンパチやらかしてから気まずくってね?」

ああ、そういえばそんなような話を聞いたような聞いていないような。


「特にトシと佐々木殿は斬り合いしちゃったからもう本当に…」

「…え?」

ききき…斬り合い?

ちょ、そんなの聞いてない…っていうか、そんなに仲悪かったの?

その前に面識あったんだ…佐々木さんは知ってたけど土方君から佐々木さんの話は聞いたことなかったから全然分からなかった…


「だから、ここは玲ちゃんに間に入ってもらって、これからの関係を円満に…」

「邪魔するぜ、近藤さん」


ガラッと開けられた襖。開けたのは土方君で、相変わらずタバコの煙を曇らせていた。


「おおトシ、なんだ帰ってたのか」

「帰ってたのかじゃねぇよ。変なことにコイツを巻き込むなって言ってんだろ」

「変なことじゃないさ。これは大事な…」

「とにかく、コイツに変なもんまで背負わせないでくれ。…行くぞ」

行くぞ、って…

近藤さんは仕方ないなぁとでも言いたそうな笑みを浮かべて、悪かったな、忘れてくれ。と言う。

忘れてくれって…無理ですよ、普通に。


「土方君」

先に行ってしまった土方君を急いで追いかける。

脚が長いから、私より歩幅も大きい。


「…婚約、したんだろ」

その言葉に、時間が止まった気がした。

知ってたんだ。知ってて一緒にご飯食べたりしてたんだ。

「…なんか理由があっての話だとは分かってる」

「…理由、知ってるの?」

「…知らねぇ」


よかった。いや、ある意味残念なんだろうか。

婚約したことを隠していた自分が馬鹿みたいだ。


「佐々木と結婚なんかさせねぇ」


ただのライバル心からきているのか、理不尽な理由で結婚させられそうになっていると思い、私を助けてくれようとしているからなのか。

その言葉の意味は深くは分からないけど、なんだかちょっと、嬉しかった。



ずるいから好きです


(深く知らないくせに、そんなこと言わないでよ)
(ほんとに、年上の余裕なんてあったもんじゃない)
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