(盗賊/学パロ)
修学旅行は沖縄でした。
「なあローランサン、高校生活で一番楽しい時期は何年だと思う?」
「さあ…?二年じゃねーの?文化祭仕切れるし修学旅行あるし、青春って感じじゃん」
「…ああ、お前は本当に馬鹿だな」
「んだとコラ」
「頭が無いローランサンの為に説明すると、楽しいと感じるのには行事の有る無しは全く関係ない。まあ関係あるだろうけど、人によって感じ方は違うからね。もしかしたら文化祭に告白した人に振られた子にとっては最悪の行事になるかもしれない。俺が言いたいのはそんな非日常の切れ端の一部のことではなくて、大学や社会人になって過去を振り返ったときに一番良い印象を感じる時期のこと。そしてそれは三年だ。なぜだか分かるか?」
「…それって付属で大学が付いている高校限定か?」
「受験が大変で三年がつまらないって決め付けている?」
「…違うのか?」
「はっきり言うと関係ない。いいか?何故三年が一番印象に残るのか、答えは高校生活を大切に過ごそうと思い始めるからだ」
「卒業が近いから?」
「その通り。例えば…そうだな、癌患者に余命が一年だと告げる。死刑囚でもいい。まあ死刑囚には処刑の日は教えられないけど、死を常に意識しているのには代わり無い。生きる時間がわずかしかないと知ったとき、人間は生きる喜びを全身に感じることができる。空の青さ、呼吸すること、花の儚さ、人肌に触れること、喋られること、全て当たり前だったことが当たり前じゃなくなる。高校生活だってそうだ。青春時代の終わりを間近に感じれば、日常が実はとんでもなく掛けがえのないものだって気付く。そして1日1日をちゃんと認識して過ごすから、後になって一番楽しかったように感じる。これはハイデガーってドイツ哲学者が言っていたことなんだけどね。能無しのローランサンにも分かるように説明してみたけど、どう?わかった?」
「能無しで悪かったな」
「…拗ねるなよ」
「で、つまりお前は何が言いたいんだ?」
「…それは長年付き合った者の勘で解いてくれ」
「お、一応理由があるのか。今回の修学旅行が原因?」
「…よくわかっな」
「へ、まじで?」
「だから、俺が言いたいのはそんな1日を大切に過ごしている先輩方にこそこの修学旅行というビッグイベントをプレゼントしてより忘れられない青春時代を過ごしてもらえば良い訳で、だらだら高校生活やってる二年が行っても意味がないわけで、つまり帰りたい」
「でかいこと言う割にはくだらなかった…。…やっと核心にたどり着いたな」
「大体なんで沖縄?修学旅行は京都だろ。もしくは北海道とか大阪とか…、何故こんな暑い時期に暑い場所に行く必要性がある」
「良いじゃん沖縄。俺好きだぜ―。東京に無い良い景色だし」
「…ローランサンの思考が理解できない」
「俺はイヴェールの考えていること理解できるぜ。お前さ暑いとか以前に、今目の前に出されてるゴーヤーが苦手なだけだろ」
「………」
「せっかく出されたんだから食えよ。勿体ないぞ?」
「……ローランサンが俺の食えば良い」
「出たよ女王様」
「ゴーヤーなんて苦いもの生徒の中で好き嫌いがはっきり分かれるってわかってるのになんで出すのかな。この学校頭に蛆わいてるんじゃないの」
「沖縄料理を満喫して欲しいんだろ…。このゴーヤーチャンプルーめっちゃ美味いぞ。苦味が良い」
「………無理」
「お前ただでさえ野菜足りない身体してるんだから食っとけよ。ゴーヤーは健康に良いんだぞ?ビタミンCあるし、夏バテに良く利くし、この苦味はモモルデシンが含まれてるんだ。食って損は無い」
「お前知識薄いくせに家庭科関連になると博識だよな…」
「ゴーヤー好きだからな」
「つっても沖縄の知識ゼロのクセに…。はいローランサンに質問、この二匹のシーサーどっちが雄でしょう」
「っ知るか!!」
「口開けてるほうだよ。幸せを捕まえる方が雄。逆に口閉じて幸せを溜め込む方が雌。午前中に現地の方に説明されてたの聞いてなかったのか?沖縄の予備知識も知らないような男にゴーヤーを食う資格はないから東京に帰ってピーマンでも食ってろ」
「んだよ八つ当たりか!!?」
「ああそうだよ八つ当たりだよ。ローランサンが横でクチャクチャゴーヤー食ってんのが腹立つんだよ!そんなんだから身体鍛えてもなよってんだよ肉食え!」
「俺よりもやしのお前に言われたくね―!!ゴーヤーの味も分からない子供舌が偉そうに物を言うな!」
「なるほどそんなにゴーヤー好きならそのままの形で突っ込んでやるよ勿論下の口に」
「ああ?今から海でナマコプレイしたいって?よし分かった表出ろ」
「うわあ先生誰か通訳呼んでください―変態がいます―」
「てめえがその卑猥な口閉じやがれ!!!」