同室の久々知は数日前から任務でいなかった。
部屋に一組しか敷かれていない布団を見ると、それがよく分かる。
だからと言って何かするわけでもない。寂しいから泣くなんてそんな子供ではないからだ。
布団にもぐりこんで、天井を見た。相変わらず変な模様をしている。



「……どうした」


声をかけると、ひょこっと申し訳なさそうな顔をした鉢屋が出てきた。不破と同じ顔をしているのに、どうして鉢屋だと分かるのかと言えば、私に会いに来るのは鉢屋だけだからだ。

おいで、と両手を広げると躊躇い無く鉢屋の体がおさまる。
申し訳なさそうな顔はすぐにむすっとした顔に変わった。


「何があった?」
「雷蔵とケンカした」
「今度は何を言ったんだ」


私は悪くない
そう言って鉢屋は顔を私の体に押し付ける。
本当に鉢屋は頑固者だ。くすくす笑うと腕を抓られた。
よしよし、と子供をあやすように頭を撫でてやる。いつもは怒るのだが今日は怒らない。相当なケンカをしたようだ。



「とりあえず、不破の顔を外してしまえ。今、そのままでは冷静になれないだろ」
「…誰の顔を借りよう」
「私はやめてくれよ?自分を抱きしめるなんて嫌だからな」
「いいや、適当に作ろう」


不破の顔から、本当に適当に作ったような顔へと変わる。
素顔を晒してくれれば嬉しかったんだけど、まあいいや。
ぎゅっと抱きしめてやれば、少し声を漏らして抱きしめ返ってきた。



「大丈夫、明日になればお互いに頭も冷えて話し合える」
「うん」
「お前らなら仲直りできるから」
「うん」


さあ、寝ようか。
そう言っても私にしがみつき離そうとしない鉢屋を見ると、今夜はここに泊まる気らしい。
布団を新たに敷くのも面倒だし、鉢屋を離すのも大変そうだったのでそのまま布団に戻る。
さっさと寝てしまおう。朝になれば久々知は帰ってくるさ。
朝になれば、鉢屋と不破は仲直りしているさ。
そう自分に言い聞かせて目を閉じた。

なんだ。
どうやら何かあったのは鉢屋だけじゃなかったようだ。
さっきより眠れる気がする。









2009.09.04
title by にやり
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