※死ネタ














私はたまらなく、彼が愛おしかった。
年下であるが故か、どこか行動が幼く見えて。けれど学園で彼は上級生だからこれがまた面白くて。


「利吉さんの意地悪。死んじゃえば良いのに」
「こら、死ねなんてそう簡単に言うものじゃない」

からかって悪かった、と謝って抱きしめると、意地悪、と小さく呟いて彼は私の背中に腕を回した。
ああもう、どうしてこの生き物はこんなに可愛いんだろう。



「愛してるよ。君が生きてるうちは私は死なないから。君を残していくわけないだろう。……愛してるよ」





利吉さんは俺を年下だからとからかう。
そのからかい方が、まるで幼子を相手にしているようで。
それがたまらなく悔しかった。
利吉さんが構ってくれるのは嬉しいけど、それだけがいただけない。
だから俺は暴言を吐いて、利吉さんに注意されるのだ。
そして拗ねた俺を抱きしめて、利吉さんは言うんだ。


愛してるよって。





「苗字先輩!来てください!」


体育委員会でマラソンをしていたときだった。
七松先輩はもう見えなくなっていて、追いかけるのを諦めた頃、滝夜叉丸が青ざめた顔で俺を呼んだ。
なんだなんだ、と呼ばれた方へ行ってみると、そこには遥か彼方に走って行ったはずの七松先輩がいた。
何かを見ている。
俺も見てみた。


見てみた。




見てしまった。





俺が見間違えるはずがない。あれは…。

その場に膝をつく。雪があったから少し痛くない。でも今はそんなの関係なかった。
そのまま四つん這いになって、あれに近づく。
雪に埋もれているがあれは確かに。



「利吉…さん……」


彼は俯せになって寝ていた。
俺も馬鹿じゃない。忍術学園で学んできただけあって、すぐ分かってしまった。
でも今だけは分かりたくなかった!




馬鹿みたいに泣いた。
七松先輩が四郎兵衛に山田先生を呼んでくるように言ったのが聞こえた。
皆、俺に気を遣って近寄らない。有り難かった。

俯せになっている体を起こして仰向けにする。
胸元に手紙のようなものがあるのを見つけた。
心の中で断って、俺はそれを開けた。
俺宛の手紙だった。



もしこの手紙がいつもより遅れて届いたなら、それはきっと君のせいだよ。
君が死んじゃえ、なんて言うから。
なんて、冗談だよ。




利吉さんにとってはいつもの冗談だったんだろう。
確かにいつも通りだった。毎回くる手紙には似たような冗談が書いてある。
けど、けどこれは無い。
貴方は本当に死んでしまったではないか!



冗談にならない!


山田先生が四郎兵衛の後を走ってくる。
そして冷たくなった彼を見て泣く。
俺は必死で自分を責める。
彼が死んでしまったのは俺のせいだ。
俺が死んじゃえって言ったからだ。

ああやっぱり貴方は意地悪だ。
だって言ったのに。俺を残して逝かないって言ったのに。
もしかして愛してるって言ったのも嘘なんですか?
他のこと全部嘘で良いですから、それだけは本当であってください。




2009.12.21

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -